石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

米牧師、35年前の「ゲイを石打ちの刑で殺せ」発言を謝罪

f:id:miyakichi:20150324200126j:plain

2015年3月21日、米国の福音主義牧師でボブ・ジョーンズ大学元学長のボブ・ジョーンズ3世が、35年前にホワイトハウスで「同性愛者を石打ちの刑にするべきだ」と述べたことを謝罪しました。

詳細は以下。

Bob Jones III Apologizes For Saying Gays Should Be Stoned To Death

ジョーンズ3世は1980年のこの日、他の牧師たちと一緒に、同性愛者を公民権法の対象に含めないでほしいという請願をするためにホワイトハウスを訪れていたのだそうです。その時彼がした発言は、以下の通り。

「こんなことを言うと、きっととても不正確な引用をされると思いますが」と、当時ジョーンズは言った。「イスラエル時代に殺人や強姦や同性愛に対して採り入れられた迅速な正義を現代に持ち込むのは悪い考えではないでしょう。聖書が命じるように同性愛者が石で打たれ、殺人者がただちに殺されるならば、問題はきっと大急ぎで解決されることでしょう」

"I'm sure this will be greatly misquoted," Jones said at the time. "But it would not be a bad idea to bring the swift justice today that was brought in Israel's day against murder and rape and homosexuality. I guarantee it would solve the problem post-haste if homosexuals were stoned, if murderers were immediately killed as the Bible commands."

まるで今のブルネイウガンダケニアや、はたまたカリフォルニア州の弁護士みたいなことを言ってたわけですね。

謝罪の全文はボブ・ジョーンズ大学のオフィシャルブログで読むことができます。以下、一部引用します。

この軽はずみな声明は35年前の政治的論争の真っ最中に出したものです。この声明は、わたしの神学とも、世界をとがめるためではなく救うために現れ、罪をあがなったキリストについて説教してきた50年間とも、まったく逆のものです。この長らく忘れられていたことばを今読むと、あたかも完全な他人の発言であるかのように見えます。もしわたしの名前が書かれていなければ、の話ですが。

このことばを消し去ることはできませんが、そうできたらいいのにと思います。なぜなら、これはわたしの心の中の信念も、説教の内容も表していませんから。1980年のあのイベント以前にも、またイベント以後にも、罪人に石を投げよと言ったことはありません。

This reckless statement was made in the heat of a political controversy 35 years ago. It is antithetical to my theology and my 50 years of preaching a redeeming Christ Who came into the world not to condemn the world, but that the world through Him might be saved. Upon now reading these long-forgotten words, they seem to me as words belonging to a total stranger—were my name not attached.

I cannot erase them, but wish I could, because they do not represent the belief of my heart or the content of my preaching. Neither before, nor since, that event in 1980 have I ever advocated the stoning of sinners.

謝罪文はこの後、聖書の現代的解釈やイエスの贖罪などについて触れたのち、最後のパラグラフで"I apologize"(謝罪します)とはっきり述べています。

同大学のLGBT+*1およびストレートの学生・卒業生を支援するNPO「BJUnity」は、この「石打ちの刑」発言への謝罪を求める署名運動を2012年からChange.orgで展開していました。同団体は今回の謝罪について、「とても驚いた」「謝罪があるとは思っていなかった」と話しているとのこと。ちなみにこの大学、2000年まで異人種同士の交際や結婚を禁じる校則さえあった保守的なところなんですよ。BJUnityは公式Webサイトで今回の謝罪に対する感謝の意を述べ、ジョーンズ3世を自分たちのプレゼンテーションに招待したい、そこで大学の生徒たちの経験を直接聞いてもらい、待望の和解のプロセスに着手したいと表明しています。

USA Todayによれば、この大学はキリスト教根本主義の学校であるため、性的指向を理由に退学させられた人もいるのだそうです。クロゼットにいることを余儀なくされたLGBT+の学生たちは深刻な孤立の問題を抱えており、自殺未遂事件すら起こっているとのこと。ジョーンズ3世が今回はっきりと謝罪したのはすばらしいことですが、自分の発言の重みを本当に理解しているのなら、彼は今後BJUnityの招きに応じて対話を重ね、学内環境の改善に取り組むべきでしょうね。ホモフォビアはこの35年の間もずっと、直接的(例:ISISによる石打ち刑)にも間接的(例:自殺・他殺・暴力・心疾患などのリスク増加)にも人を殺し続けてるんですから。

*1:LGBT+の「+」記号は、LGBTの4文字に明白に含まれない性自認や性的指向を持つマイノリティを表すものです。