石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

米教育委員会、小説『Two Boys Kissing』を図書館から排除しないと決定

Two Boys Kissing

米国バージニア州の教育委員会が、同性愛テーマを持つヤングアダルト小説『Two Boys Kissing』を学校の図書館から排除せよという保護者の訴えを、満場一致で退けました。

詳細は以下。

US: School board votes not to ban ‘Two Boys Kissing’ book · PinkNews.co.uk

この『Two Boys Kissing』は、『ボーイ・ミーツ・ボーイ』のデイヴィッド・レヴィサンの作品。内容は「17歳のゲイカップルがギネス記録を目指して32時間のキス・マラソンに挑戦し、そのことが他のさまざまな少年たちに影響を与えていく」というもの。カミングアウトや、ジェンダー・アイデンティティや、ゲイ出会いサイトの陥穽などのテーマが登場するこの本は、2014年ストーンウォール賞佳作に輝いています。

2014年2月7日、バージニア州フォーキア郡にあるフォーキア高校に通う生徒の保護者が、この本を図書館から撤去するよう学校に要求。学校はその求めに応じず、保護者は教育委員会に訴えました。教育委員会は4月23日に公聴会を開いた後、満場一致でこの本は撤去しないと決定したとのこと。

「これはセックスについての本ではありません」。委員会メンバーのジョーイ・クリー師は、この本をそのまま保持しておくという決断を述べるにあたって発言した。「激しいキスの場面は、若い人たちに恋愛関係や、敬意や、人間の置かれた状況に関するより深い懸念について書かれた本を読ませるための仕掛けに過ぎません」

“This book is not about sex,” said committee member Rev. Joie Clee Weiher when she gave her decision to retain the book. “Heated scenes of kissing are merely a hook, a draw for young people to read a book about relationships, respect and the deeper concerns of the human situation.”

フォーキア高校の教員、メアリー・ミラー(Marie Miller)さんは、この本に反対する人は内容が不適切だからというより「10代ゲイの話だから」という理由で反対しているのだと述べています。

「もしこの本が10代異性愛者の恋愛関係に焦点を当てるものだったら、抗議の対象にはならなかったでしょう」

“If the focus of this book was on heterosexual teen relationships, it would not be the subject of a book challenge,”

この本、日本のAmazonの「なか見! 検索」で中を覗くことができるんですよ。今ためしに少し読んでみたんですが、単なるみずみずしいティーン小説であって、確かに何がどう高校生に不適切なんだかわかりません。これがダメならホーソーンの『緋文字』や、フローベールの『ボヴァリー夫人』とかどうなんの。不倫の話だぜ、あっちは。

もちろん『緋文字』にせよ『ボヴァリー夫人』にせよ過去には検閲の対象とされた時期があり、それを乗り越えて現在高い評価を勝ち得ているわけですが、ゲイ文学も今そういう一種の過渡期にあるんじゃないかという気がします。内容よりもまず素材だけで「けしからん!」とアレルギー反応を起こされてしまう時期、というか。教育委員会に、そのアレルギー反応に迎合しないだけの理性があって、ほんとうによかったです。

Two Boys Kissing

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Two Boys Kissing (English Edition)

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