石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

オーストリアのヒゲのドラァグクイーン、ユーロヴィジョンで優勝

Rise Like A Phoenix

オーストリアのヒゲのドラァグクイーン、コンチータ・ヴルスト(Conchita Wurst、姓は『ウルスト』と表記されることも)が、2014年5月10日、欧州のポップ音楽コンテスト「ユーロヴィジョン」で優勝しました。

詳細は以下。

Austrian drag queen Conchita Wurst WINS Eurovision! · PinkNews.co.uk

「コンチータ・ヴルスト」というのはドラァグ名で、本名はトム・ノイヴィルト(Tom Neuwirth)さんといいます。彼はオーストリア・オーバーエスターライヒ州のグムンデン出身で、1988年生まれ。下記ツイートの左の写真がトム、右の写真がコンチータです。

ノイヴィルトさんは、10代の頃ゲイだという理由で差別を受けたことから、架空の人物コンチータ・ヴルストを創り出したのだそうです。目的は、独特な外見のドラァグとしてパフォーマンスすることで、人々に性的指向について考えてもらったり人と違うティーンエイジャーがもっと楽に生きられるようにしたりすること。ちなみに「コンチータ」というファーストネームはキューバ人の友達につけてもらい、「ヴルスト」はドイツ語の"Wurst"(ソーセージ)からとったんだそうです。

ウクライナ、ロシア、ベラルーシの3国はコンチータの出場に反対し、彼女のエントリーを取り消すよう要求していました。ロシアでは、ユーロヴィジョン2014をロシア国内で放映しないでほしいという嘆願まで起こったとのこと。PinkNewsによると、その嘆願の文面はこんなだったそうです。

「オーストリアは、ロシアには当てはまらないライフスタイルを送っているトランスヴェスタイトの参加者コンチータ・ヴルストをユーロヴィジョン2014の同国代表とする予定です。

ロシアの子供たちが視聴する人気ある国際的大会は、ヨーロッパの自由主義者たちのせいでソドミーの温床となってしまったのです。

ロシアは、男女間の愛と支え合いに基づく正常かつ健康的な家族の価値を維持することに成功した、ヨーロッパでただひとつの国です。

これが、わたしたちがユーロヴィジョン2014をロシア内で放映することに反対する理由です」

“Austria will be represented in the Eurovision 2014 by the transvestite contestant Conchita Wurst who leads the lifestyle inapplicable for the Russians.

“The popular international competition that our children will be watching has become a hotbed of sodomy at the initiation of the European liberals.

“Russia is one of the only European countries that has managed to maintain normal and healthy family values based on love and mutual support between MEN and WOMEN.

“That is why we are against the Eurovision 2014 to be broadcast in Russia.”

トランスヴェスタイトとドラァグと同性愛の区別すらついていない、非常に残念な意見ですね。藪内笹子の漫画全巻送りつけんぞコラ。

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コンチータ・ヴルストは予定通りユーロヴィジョンに出演し、"Rise Like a Phoenix"を熱唱。

ぜひ歌声も聞いてください。


Conchita Wurst - Rise Like a Phoenix (Austria) 2014 LIVE Eurovision Second Semi-Final - YouTube

以下、彼女の優勝の弁。

「この夜は、平和と自由の未来を信じるすべての人に捧げられています」

「あなたたちはありのままの自分を知っています。わたしたちはひとつ、わたしたちを止めることはできません!」

“This night is dedicated to everyone who believes in a future of peace and freedom.

“You know who you are, we are unity, and we are unstoppable!”

なお、ロシアの政治家や著名人はコンチータの優勝に怒り狂い、「ヨーロッパの終わりだ」と騒いでいる模様。あたしはそれ、ちょっと違うと思うな。これは「ヨーロッパはアンチゲイな態度を支持しない」という(多分に政治的な)表明であり、強いて言うなら新たな時代の「始まり」なんじゃなんじゃないかとあたしは思ってます。

追記

コンチータ本人のツイート。意味は「ただいま。何て言ったらいいのかわからないわ……ありがとう!!!!!」。