石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

米コロラド州のベイカリー、アンチゲイなケーキ製作を拒否し「差別」と訴えられる

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米国コロラド州のベイカリーが、ケーキにアンチゲイなデコレーションをほどこすことを断ったため、「差別」として州の規制監督署に苦情を入れられてしまったそうです。

詳細は以下。

Pro-LGBT Colorado baker slapped with religious discrimination complaint - Out FrontOut Front

このお店は同州デンバーにある「Azucar Bakery」。こんなお店です。


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2014年3月13日、年配の男性がこのお店にやってきて、聖書の形のケーキを注文しました。お店のオーナーのマージョリー・シルバ(Marjorie Silva)さんによれば、そうした注文は珍しいものではなく、同店ではしょっちゅうキリスト教テーマのケーキを焼いているとのこと。でも、この紳士の注文はちょっと違っていました。聖書ケーキの上に、次のような飾りをつけてほしいというものだったんです。

  • 「神は同性愛を憎んでいる」(“god hates homosexuality”)という文字
  • 手をつなぐ2人の男性の上に"NO"と書いたもの
  • 『ゴーストバスターズ』のロゴのような、赤いバツマーク
  • 聖書の言葉

シルバさんは、聖書形のケーキは焼くし、アイシングなどデコレーションに必要なものも売るから、デコレーションは自分でやってはどうかと交渉したとのこと。男性客は納得せず、シルバさんの弁護士と話をさせろと言って退店。その日のうちにあと2回もやってきて、3度目の時点で彼の態度は「とても押しつけがましく、破壊的」だったと、お店のパティシエのリンジー・ジョーンズ(Lindsay Jones)さんは語っています。シルバさんは結局、この客に帰ってもらうため、弟さん(お兄さんかも)に応援を頼まなければならなかったとのこと。

「男性は『後で連絡するからな!』と言い、怖くなりました」とマージョリーは言う。「後をつけられるのではないかと思いました。店の大きなピンク色のバンを見れば、私が乗っているとわかりますからね」

“He said, ‘You will hear from me!’ and I got scared,” Marjorie says. “I was worried he was going to follow me — you can tell who I am in our big, pink van.”

その「連絡」は、シルバさんの心配していたのとは違う方向からやってきました。コロラド州の規制監督署(Department of Regulatory Agencies (DORA))から、「差別されたとの苦情申立があった」「2014年3月13日の午後に何があったか説明すべし」という内容の手紙が届いたんです。

この文脈で「差別」とはよくも言えたもんだわ、例の男性客。

ケーキ店でのゲイ関係の差別問題といえば、「自称クリスチャンの店主が、同性婚用のウエディングケーキを売るのを拒否した」というケースが定番です。同じコロラド州で「Masterpiece Cakeshop」というお店が同性婚ケーキ製造を断ったときには、行政裁判所が違法な差別であるという判決を下しました。オレゴン州では「Sweet Cakes By Melissa」という店が同じことをして、やはり違法な差別と判断されています。

しかしここで、「同性婚のケーキを売らないのが差別なら、アンチゲイなケーキを売らないのも差別」と考えるのは筋が通りません。まず第1に、今回の「Azucar Bakery」の場合、この客は差別と憎悪を扇動するケーキを作らせようとしたわけでしょう。「差別と憎悪の扇動に手を貸さないのは差別」なんて理屈、成り立つわけないじゃん。

ちなみにこの男性客、ケーキのデザインを書いた紙をパティシエ以外の従業員に見られないよう注意しており、パティシエに見せた後はポケットにしまいこんで、コピーすら取らせなかったのだそうです。つまり、自分でもオフェンシヴなデザインだとわかっていて、その上で荷担させようとしていた可能性があるわけ。それで拒否されたら「差別だ」って、意味がわかりません。

第2に、「Azucar Bakery」はこの客にケーキを「売らなかった」わけではありません。聖書の形のケーキは焼くしトッピングに必要なものも販売すると説明した上で、あくまで「ケーキの装飾は自分でやってほしい」と申し出ていたんですからね。「ケーキは売るが、ケーキの上にヘイトスピーチを書くのは断る」というのと、ある性的指向の客にだけケーキを焼くことも売ることも断るというのとでは、文脈が大きく違います。

第3に、米国の法学者フェリックス・フランクファーターのこちらのことばをどうぞ。

"It is a wise man who said that there is no greater inequality than the equal treatment of unequals."

なお、この「Azucar Bakery」は、普段から同性カップル用のウエディングケーキも作っているのだそうです。なのに、この男性客との口論を断片的に耳にしたお客さんの中には、「ゲイのウエディングケーキを断ったせいで揉めているのだ」と誤解しちゃった人もいるのだそうで、シルバさんは疲れ果てながら事情説明するはめになったとか。迷惑きわまりないですね。

PinkNewsのコメント欄によれば、この1件を知った地域の人々(宗教団体含む)は「Azucar Bakery」を応援しているとのこと。規制監督署(DORA)はシルバさんの最終的な手紙を受領してから30日で判断をおこなうとのことで、公正な判断がなされるよう祈っています。

追記

コロラド州規制監督署(Colorado Department of Regulatory Agencies )は2015年3月24日、Azucar Bakeryyがこの客の求めに応じなかったのは差別ではなく、権利の範囲内のことであるとする判断を下しました