石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

「俺らの曲を使うな」米ロックバンドがキム・デイヴィスにお怒り(追記2件あり)

アイ・オブ・ザ・タイガー

ケンタッキー州ローワン郡のアンチゲイ書記官キム・デイヴィス(Kim Davis)氏が、2015年9月8日に拘置所から釈放されました。支援者の拍手のもと、大音量の「アイ・オブ・ザ・タイガー」とともに拘置所から出てきた彼女に、しかしとある人々が怒っています。

詳細は以下。

Anti-gay clerk annoys Survivor by using ‘Eye of the Tiger’ at her release · PinkNews

デイヴィス書記官の釈放シーンはこちら。(※2015年9月11日追記:権利者からの著作権侵害の申し立てにより、現在動画は削除されています)

ローワン郡の公務員であるデイヴィス氏は、裁判所の判決に逆らって同性カップルへの結婚許可証発行を拒否し続けていたため、法廷侮辱罪で9月3日に拘置所送りを言い渡されました。9月8日、デイヴィッド・L・ブラニング(David L Branning)地裁判事が条件付きの釈放を認めたため、再びシャバに出てくることに。ちなみに条件とは「結婚許可証の発行を妨害することで(同性婚の)プロセスを邪魔しないこと」だそうです。

共和党の中でも最保守派と言われる大統領候補マイク・ハッカビー氏は同性婚に反対しており、デイヴィス氏を支援しています。彼はデイヴィス氏の釈放に合わせて拘置所前で集会を開き、十字架を振り回すお仲間たちの歓声の中、デイヴィス氏と共に壇上に並びました。その場面のBGMとして使われたのが、映画『ロッキー3』の主題歌「アイ・オブ・ザ・タイガー」。

これを知って怒ったのが、この楽曲の持ち主である米ロックバンド、サバイバー(Survivor)。公式Facebookで以下のように発言しています。

やめろ! こっちはキム・デイヴィスが俺の曲を、アイ・オブ・ザ・タイガーを使うことを認めてないぞ! あの女にはチャーミン(訳注:トイレットペーパーの商品名)を使うことだって認めんわ! おいマイク(・ハッカビー)、おまえはドナルド(・トランプ)じゃないんだから、もうちょっとましなことをしろよ。そんじゃあなーーーーーーーーーーーーー!!!!!!

NO! We did not grant Kim Davis any rights to use "My Tune -The Eye Of The Tiger." I would not grant her the rights to use Charmin! C'mom Mike, you are not The Donald but you can do better than that - See Ya really SoooooooonnnnnnN!!!!!!

これについてとりあげたシカゴ・トリビューンの記事も面白いです。サバイバーのフロントマン、フランク・サリバンによる「これはただのロックンロールなんだよ」「この歌は何に対するアンチでもない」などの声を紹介するのみならず、こんなことも書かれていたりして。

「アイ・オブ・ザ・タイガー」のことを考えるときは、ミスター・T演じるところのクラバー・ラングを倒すために準備するロッキー・バルボアについて考えるのが当然というものだ。同性愛は罪だと思っている、偽善的な、3度の離婚歴を持つケンタッキーの公務員が、「あんまりまともな匂いがしないハム」よりはちょっとだけ多く票がもらえる政治家と一緒にのろのろステージに上がるところを思い浮かべるのではなく。

When you think of "Eye of the Tiger," you're supposed to think about Rocky Balboa preparing to beat Mr. T's character, Clubber Lang. Not about a hypocritical, thrice-divorced Kentucky clerk who thinks homosexuality is a sin, slowly walking onto a stage with a politician who is polling only slightly better than "ham that doesn't smell quite right."

うむ。その通り。おそらくハッカビー氏はデイヴィス氏を偉大なファイターとして祭りあげたかったのでしょうが、あれじゃロッキー・バルボアに対して失礼というもの。

ちなみにデイヴィス氏の部下(副書記)のブライアン・メイソン(Brian Mason)氏は、たとえデイヴィス氏から出すなと言われても同性カップルに結婚許可証を出すと発言しています。従ってデイヴィス氏がどんな勇ましい曲とともに復職しようと、以前のように一方的に同性カップルを追い散らすことはできなさそう。残るは法廷闘争(『キム・デイヴィス』のサインのない結婚許可証が法的に有効かどうかという議論が起こっているので)でしょうが、いつまで争うんでしょうかね、これ。その前にまずサバイバーから著作権侵害で訴えられて、こっぴどく負けちゃえばいいのに。

追記(2015年9月10日)

TMZ.comによると、サバイバーは本当に法的措置を検討中とのこと。続報が待たれます。

追記2(2015年9月15日)

LGBTQ Nationによると、ケンタッキー州のジャック・コンウェイ(Jack Conway)法務官のスポークスウーマンが、2015年9月14日、キム・デイヴィス氏が認可していない結婚許可証(彼女の拘置所収容中および釈放後に発行されたもの)は法的に有効だとする法務官の見解を発表したそうです。