米金融グループ「マスミューチュアル・フィナンシャル・グループ」のマスミューチュアル生命保険が、実在の同性カップル5組へのインタビューを集めたCMを発表しました。笑いあり涙あり、そして生活感ありのインタビュー内容がいい感じ。
詳細は以下。
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CMはこちら。
インタビューで各カップルが聞かれているのは、ふたりのなれそめやこれまでの交際期間、クロゼットだった時代のこと、プロポーズのことばなど。皆さんのクロゼット時代の話(『保守的な地方出身だから、誰にも言えなかった』『みんな知っていたが誰も口にはせず、暗黙の了解だった』etc.)は聞いていて胸が詰まるようですが、その一方で今の幸福を語るエピソードもたくさん出てくることに救われます。
見ていていちばん楽しかったのは、「ふたりの関係を周囲の人が知ったときの反応は?」という質問へのお答え2種。まず、お髭の熊さん系カップルの方のこの話。
「いちばん上の息子がやってきて、こう(ぽんと肩を叩くしぐさをして、小声になって)『父さん、ぼくら、知ってたよ』って言ったんです」
あるある。本人たちは隠しているつもりでも既に周囲は知っていて、そっと見守っていたというパターンね。
もうひとつは、白髪の高齢女性カップルが笑いながら言うこちらのお話。
「ジェーンの継母が(わたしたちの関係を)知ったときの反応は、『どうして女ふたりでひとつのキッチンを使えるの?』でした」
日本ではよく「台所に女ふたりはいらない」なんてことを言いますが、アメリカでも同じなのかと笑ってしまいました。
そんなわけでたいへん面白く鑑賞したのですが、マスミューチュアルでもっとも注目すべき点は「CMに同性カップルを出したこと」でも「同性カップル向けの商品を売っていること」でもなく、2014年にヒューマン・ライツ・キャンペーン(HRC)の企業平等指数で満点を取っていることだと思います。これ、単にLGBTフレンドリーめいた商品を売ってるだけじゃダメで、社内での性的指向や性自認、ジェンダー表現による差別を禁じる明文化された方針があるかとか、同性のパートナー/配偶者が異性カップルと同等の手当てや給付を受けられるかとか、トランスジェンダーの社員が平等に健康保険を使って医学的ケアを受けられるかとか、さまざまな基準をクリアしていないと取れないんですよ。マスミューチュアルはそれを100%達成したわけで、そこをまず評価したいです。
もちろんHRCの判断が常に絶対というわけではないし、HRC自体にもさまざまな批判はあります。しかしこの指数は、単にLGBT市場のカネ目当てで「LGBTフレンドリー」を自称しているだけの会社なのか、それとも本気で性的少数者を平等に扱う姿勢があるのかを判断する目安のひとつにはなると思います。たぶん今後、日本でもLGBTにあれ買えこれ買えと訴求するキャンペーンは増えていくんじゃないかと思いますが、当時者のひとりとしては「まず御社のセクマイ社員の扱いを発表してください」と思いますね。話はそこからだよ。