ドイツのドルトムントでトランスジェンダー女性ふたりに石を投げつけたとして、北アフリカ系の10代男性3人が逮捕されました。
詳細は以下。
Transgender women 'attacked in the street' by north African teenagers in Germany - Telegraph
この男性らは2016年1月11日、駅の近くでトランスジェンダー女性のヤスミンさん(Yasmin, 37)とエリサさん(Elisa, 50)を口説こうとした後、彼女らがトランスだと気づいて「おまえら売春婦は石打ち刑にせねばならない!」と言いながら石を拾って投げつけたため、パトロールの警官によって逮捕されました。ドルトムント警察のKim-Ben Freigang警部によれば、この3人は全員北アフリカ系で、盗みや暴行などの前科があり、年齢は16歳から18歳だとのこと。彼らが難民であるかどうかについては、警察はコメントしていません。
以下、Jerusalem Postよりヤスミンさんの弁。
「彼らがしたのは野蛮な行為でした。彼らは野蛮人です」
“That was barbaric what they did. They are barbarians,”
「2016年のドイツで、石打ちですよ!」
“In 2016, in Germany, with stoning!”
ヤスミンさんは、この事件を機に、エリサさんと住んでいる家に防犯カメラを取り付けたのだそうです。トランスジェンダー女性として生活してきて安全でないと感じたのはこの30年間で初めてだ、と彼女は話しています。
英語圏の報道をざっと見た限りでは、この事件をメルケル首相の難民政策やケルンで起きた性暴行事件、そしてISISによるゲイ殺害事件にからめて論じているメディアが多いようです。しかし、これってエスニシティや宗教的信条の違いだけで単純に片付けるわけにはいかない問題なのでは。というのは、ヤスミンさんがこんな指摘をしているから。
「わたしたちがトランスジェンダーだということに気づいて、彼らは自分たちの名誉が傷つけられたと思ったのです。それで彼らはブチ切れたんですよ」
when they realised we were transgender, they felt their honour was hurt. That’s why they snapped.
この手の、「シスヘテ女性だと思い込んで口説いた相手がトランスジェンダーだったと気づいた男性が、なぜか瞬時に被害者ポジションにおさまり、『俺様の名誉が傷つけられた』と暴力をふるう」というパターンは、どこの国のどこの宗教の人にもありうることなんじゃないかと思います。実際、米国ケンタッキー州でパピ・エドワーズ(Lamar "Papi" Edwards)さんというトランスジェンダーがネットで知り合った男に殺された(トランス女性だと告げたために射殺された)事件でも、パピさんの友達でトランス女性のティファニー(Tiffany)さんがこんなことを言ってましたよ。
「人が怒り出すのはよくあることです、特に大勢の人の目の前ではね」
“It’s common for people to get mad, especially if it is in front of a group of people,”
「こちらがニューハーフだということを教えると、そういう人たちは激怒して、大勢の前で報復しようとします。他の人たちから、違う種類の人間だと思われたくないからです」
“Tell them you’re a tranny; they will get mad and retaliate in front of a group because they didn’t want people to think differently of them.”
今回のドルトムントの事件も、これと共通するものがあると思うんですよねえ。こうした事件をもっぱら民族的・宗教的マイノリティの問題であるかのように論じてしまうことは、マジョリティたるシスヘテロ男性たちのマチスモによる害から都合良く目をそむけることでもあって、それはかなり危険なことなんじゃないかとあたしは思っています。