石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

ヘテロ恋愛、牛歩すぎない?―ドラマ『スーパーガール』2x12感想

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モン=エルのストーリーラインが退屈すぎ

レナ・ルーサーが再登場し、カーラと友情を深める回。レナとカーラのやりとりが妙に百合百合しいサブテキスト満載な一方、カーラとモン=エルの恋路は新味のない手法で無理やり引き延ばされています。異性愛ももう少し丁寧に書いてやってよ、ライターさん。

なんでここまで芸もなく引き延ばすの

前回あたりからのカーラ(メリッサ・ブノワ)とモン=エル(クリス・ウッド)のラブロマンス描写の何が退屈って、少年ジャンプもびっくりの長々とした引き延ばしっぷりです。おまえらはシュート1本打つのに30分かかるキャプテン翼か何かか。ふたりがくっつきそうでくっつかない状態を延々と描くことで視聴者の興味を引き留めたいという作り手側の意図はわからないでもないのですが、それにしては「くっつかない」理由に説得力がないところが納得いきません。

一応、恋の障害として、カーラが「すべては手にできない(スーパーヒーロー業と恋愛の両立は無理)」と思っていたという描写もあることはあるんですよ。でも、それってシーズン1前半のカーラがアダム(ブレイク・ジェナー)と別れた時点で悩んでいたことであって、S1E18でジェームズ(メカード・ブルックス)に告白するあたりで乗り越えたはずじゃなかったんですか。第2シーズンでのカーラの恋については、S2E8でS1終盤のとある場面の焼き直しが出てきた時点で「既視感がありすぎる」と思ってはいましたが、ここまで同じことの繰り返しばかりで牛歩戦術をとらなくてもいいのでは。結局、現在のストーリーラインを引っ張っていくだけの新しいアイディアがないってだけのことじゃないの?

オーディー・マーフィーという西部劇俳優はかつて、「四十何本にのぼるまったくおんなじ西部劇に、そのつどちがう馬にまたがって、私は主演した*1」と言ったそうです。このことばをエッセイで紹介した片岡義男氏は「ちがうのは馬だけで、ストーリーもなにも、みんなおなじだったというわけだ*2」と説明しています。この『スーパーガール』のカーラの恋愛も、今のところ「馬」がジェームズからモン=エルに変わっただけで、「ストーリーもなにも、みんなおなじ」であるようにしか見えません。これじゃカーラが気の毒です。仮にも主人公なんだし、もっとアレックス(カイラー・リー)とマギー(フロリアナ・リマ)のローラーコースター恋愛に負けないぐらいのアイディアをつぎこんでやってよ。

それでも今回のエピソードの終わりあたりでは、一瞬だけ「ひょっとしてここから怒涛の急展開か!?」と思わないでもなかったのですが……なんのことはない、その後に出てくるのは、単なるS2E8のシークエンスの使いまわし。しかもあまりにも無理やりすぎて白けました。今後もまだこんなモタモタしたソープオペラごっこが続くようなら、もうカーラとモン=エルのシークエンスだけ全部早送りにして視聴しようと思います。

一方レナとカーラは

ファンガールの間では以前から「ケミストリーがある」と話題になっているレナ(ケイティ・マクグラス)とカーラの関係ですが、今回はドーナツと花という小道具がさらにふたりの仲を盛り上げています。レナの子供の頃からの孤独や、それに付け入って彼女を利用しようとする母リリアン(ブレンダ・ストロング)の酷薄さが、レナがカーラに感じる親愛の情の裏打ちになっているところもよかった。ここまでやっておいてから、フラッシュバックを交えたチェスのシークエンスを配し、結局この友情(?)のゆくえをミステリアスなままにしておくという手腕にも拍手です。カーラとモン=エルのラブロマンスにもこれぐらいしっかりした背景や先の読めなさを仕込んでやればいいのに、なぜそれがができないのか本当に謎。

一方今週のサンバース(アレックスとマギーのカップル)は

冒頭のバーの場面で、アレックスがマギーを恋人として皆に紹介するくだりが興味深かったです。恋人は男だろうと思い込んでいた人、女だと知っていたけど言わなかった人等々の中で、モン=エルがしれっとこんなことを言うんですよ。

「それ(女性の恋人が女性だということ)って地球じゃ何か問題になることなの?」

"Is that like a problem here on Earth or..."

で、アレックスから「地球では、レディーがレディーを愛することに誰もが賛成しているわけではない」と説明された後の返事はこう。

「へえ、ダクサム星じゃ、それって多ければ多いほど幸せなことなんだけど」

"Oh, on Daxam it's the more the merrier."

ダクサムはクリプトンの姉妹星で、民主制ではない上に奴隷の使用も認められており、クリプトン星人からはならず者の星だと思われているところです。でも、モン=エルのこの発言からすると、どうやら同性愛についての偏見はないと考えられるわけ。これって巷にはびこる、「ゲイ・ライツを認めている文化圏は『先進的』であり、そうでない文化圏は『遅れている』」のような単純すぎるステレオタイプにさりげなく異を唱える描写なのではないかと思いました。深読みのしすぎかもしれませんけどね。

まとめ

久々のレナ・ルーサーのストーリーラインは緻密で面白かったし、サンバースの登場シーンもよく練られていたと思います。でも、カーラとモン=エルのヘテロ恋愛の牛歩っぷりは退屈のひとこと。「『こちらブルームーン探偵社』でブルース・ウィリスとシビル・シェパードがくっつきそうでくっつかない様子をまるまる5シーズンぐらい見せつけられて鍛えられたあたしはまだ平気」とうちの彼女なんぞは言っていますが、修行の足りない自分にはちょっとつらかったです。

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*1:片岡義男. (1979). 『アップル・タイザーと彼女』. p. 215. 東京: 角川書店.

*2:片岡義男. (1979). 『アップル・タイザーと彼女』. p. 215. 東京: 角川書店.