石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

だからレナにしとけとあれほど―ドラマ『スーパーガール』2x20感想

Supergirl 2018 Calendar

毒親問題と自警団問題

デスパレートな姑ことレア女王がレナ・ルーサーを騙し、ある計画を実行。母親の愛に飢えたレナを、レアがやすやすとたぶらかしていく過程が怖いです。一方、ジェームズはようやくガーディアンの活動に疑問を感じ始めます。遅いわ。

『スーパーガール』と親子関係

『スーパーガール』のキャラクタたちは、親に対して愛憎の入り混じった複雑な感情を抱いている人がほとんど。高圧的な母親に悩まされるキャット、父親が殺人犯であることを隠していたウィン(ジェレミー・ジョーダン)、母親からの期待がプレッシャーで一時期すさんでいたアレックス(カイラー・リー)などがその典型ですが、今回スポットライトがあたるレナ・ルーサー(ケイティ・マクグラス)もまた、例外ではありません。家庭環境に恵まれず、母親的な存在からの愛情と承認に飢えている彼女の心をレア女王(テリ・ハッチャー)が手玉にとっていく過程ときたら、ほとんどサイコホラーみたいでした。レナがレアに対して見せる、ちぎれんばかりに尻尾を振る子犬のような反応がまた超リアルで怖かった。そうそう、機能不全家庭出身だと、本当にあんな風になりがちなんだよね。ケイティ・マクグラス、演技うまいよなー。

『スーパーガール』はもともと、「よそからやってきた悪い異星人から地球を守る」という古典的テーマではなく、「いかにして自分たちの中の偏見や排外主義と戦い、異質なものと共存していくか」という今日的テーマを打ち出している作品ですが、家族関係に関してもやはり新しいものを描こうとしているように見えます。つまり、ありがちな家族バンザイ親子の愛バンザイ路線ではなく、もっと毒もあれば痛みもあるリアルな描写に踏み込んでいく傾向が強いんです。SF設定はいっそ気持ちいいほど大雑把だったりするのに、こういうところが妙に繊細なのが面白いと思います。

ガーディアンと暴力

レナ・ルーサーの人物造形がますます厚みを帯びていくのに対し、ジェームズ・オルセン(メカッド・ブルックス)の人物像はもはや金沢の金箔にも負けないほどペラッペラになりつつあります。周囲にどれだけ止められても街角でチンピラをボコるひとり自警団「ガーディアン」としての活動をやめず、しかもスーパーガールと同等のヒーロー気取りでふんぞり返っていた彼は、今回突然「助けたはずの相手から怖がられる」「希望じゃなくて恐怖をインスパイアしてる」と悩み始めるんですが……ありていにいって、ばか? スーパーヒーローでもなく、法的権限も持たない正体不明の男が仮面で顔を隠して人を殴っていたら、客観的に見て怖いに決まってるでしょうが。それだけのことに気づくのに数週間もかかるって、いったいどんな脳みそしてるんですかこの人は。

それにだいたいジェームズがガーディアンを志した理由の「人を助けたい」っていうのは、本業のフォトジャーナリストの仕事でもじゅうぶん、かつ合法的に達成できるものだったのでは。実際、そのへんの道端で私刑にいそしむガーディアンより、報道の仕事に誠実に取り組み続けるカーラの上司、スナッパーの方が結果としてよっぽどたくさんの人を助けているはず。かといって、ここまで鈍いジェームズが今さらジャーナリズムの世界で大成するとは考えられないし、とにかく今シーズンのガーディアンのストーリーラインは何から何まで失敗だったとしか思えません。

カーラのラブ・インタレストの座から降ろされたジェームズに何らかの役割が必要だったというのはわかるし、彼がオタクのウィンと組んでヒーローになるというアイディアそのものも悪くはなかったと思うんですよ。マッチョ白人男性ではない、黒人とオタクのヒーロー誕生というのは、このドラマの基本路線にもそぐうものですし。でもそこで、ガーディアンを妙にうぬぼれていて、自らの暴力性に無頓着で、無意味に低いキモい声(何なのあれ? テストステロン自慢のつもり? 色気のかけらもないんだけど?)で「ガーディア……ンンン……」と名乗って悦に入るキャラにしてしまったのは雑すぎたんじゃないかなー。今回のエピソードだけでここまでの雑さの尻ぬぐいがし切れているとはとても思えず、ジェームズの今後の身の振りようが気になります。

その他

モン=エル(クリス・ウッド)が相変わらずのママズ・ボーイっぷりを縦横無尽に発揮しており、「カーラは何がよくてこんな男とつきあっているのか」という今シーズン100回目ぐらいの疑問が頭の中をこだましてしまいました。だから最初からモン=エルじゃなくてレナ・ルーサーにしとけばよかったのに。少なくともカーラがレナのそばにいて、ちゃんと気を配っておけば、今回みたいなトラブルも防げたでしょうに。

まとめ

レナのストーリーとケイティ・マクグラスの好演が光る回でした。しかしジェームズとモン=エルが相変わらず鬱陶しいので、前者はメトロポリスに、後者はダクサム星にさっさと送り返すべきだと思います。

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