石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

ヒューストンの教会がハリケーン「ハーヴィー」ボランティアをクビに。理由は「ユダヤ人でレズビアンだから」

Hurricane Harvey Flooding - 8/26 to ?
Hurricane Harvey Flooding - 8/26 to ? / jillccarlson

2017年8月末に大型ハリケーン「ハーヴィー」によって甚大な被害を受けた米テキサス州ヒューストンの教会が、同教会で被災者支援活動をしていたボランティアの女性をクビにしました。理由は、彼女がユダヤ人でレズビアンだから。

詳細は以下。

Houston Church Fires Hurricane Harvey Volunteer Because She's A Jewish Lesbian | NewNowNext

この女性カルメン・ヒックス(Carmen Hix)さん(64)は、ヒューストンの自宅近くにあるキャルヴァリー教会(Calvary Church)で、数日間連続でボランティア活動をしていたのだそうです。彼女は教会の食糧貯蔵室の仕事を担当し、近隣の家々から食料品の寄付を集めたり、被災者に食べ物を配達したりしていたとのこと。ヒックスさん自身も、500ドル以上相当の食べ物をこの教会に寄付していたそうです。

そんなある日、この教会のロン(Ron Hindt)牧師とボランティアの監督がヒックスさんを呼び出し、彼女がボランティアのミーティングの後で「シャローム(『平安あれ』というユダヤ人のあいさつ)」と言った理由を問いただしたのだそうです。そこでヒックスさんが自分はユダヤ人だからと答えると、牧師からもう食料貯蔵庫には来ないでほしいと言われたとのこと。理由は彼女が「教会の信仰を共有していないから」。これに立腹したヒックスさんは後で教会に電話を入れ、牧師とふたたび話し合うことになったのですが、その話し合いで待ち受けていたのは彼女の性的指向に関する質問でした。

ヒックスさんは他のボランティアの人から今つきあっている人はいるのかと質問されたとき、「いますよ、同じ女性と20年間つきあっています」と答えていたのだそうです。牧師はそれをどこかで小耳にはさんでいたらしく、彼女がレズビアンであることを確かめてから、「あなたにうちの教会を代表させるわけにはいきません……レズビアンであることは罪ですから」と言ったのだそうです。

ヒックスさんがことの顛末をFacebookに投稿したところ、牧師は「謝罪」の文章をFacebookにポスト。 NewNowNextによれば、文中では同教会はヒックスさんの助力を「真心をこめて」受け入れていたが「ある誤解を含む出来事」があり、立腹した人物には「誤解」について謝罪済で、「当教会は人種、性的指向、宗教などを問わずすべての人とキリストの愛を分かち合っている」などとつづられていたとの由。さらにはこんなことも書いてあったのだとか。

彼女と彼女のパートナーを、今度の土曜日教会でわたしとわたしの妻と一緒に過ごしてくれるよう招待しました

I invited her and her partner to sit with my wife and I in church this Sunday

しかしながら、ヒックスさんの側の見解はこうです。

彼はわたしとわたしのパートナーに教会に来るよう勧めたのですが、その理由は「主の御霊があなたの生き方の罪悪を示し、あなたの妻との20年間におよぶパートナーシップは罪だと理解できるよう回心させてくださるから」というものだったんですよ。わたしがボランティアをクビにされたことや、時間とお金をこの牧師の食糧貯蔵庫にささげたことについてどう思っているか、どうかキャルヴァリー教会に教えてやってください。

HE INVITED MY PARTNER AND I TO COME TO HIS CHURCH AND THE SPIRIT OF THE LORD WOULD SHOW ME THE EVIL OF MY WAYS AND WOULD CHANGE MY HEART TO REALIZE THAT MY 20 YEAR RELATIONSHIP WITH MY WIFE WAS A SIN. PLEASE LET THE CALVARY CHURCH KNOW HOW YOU FEEL ABOUT MY BEING FIRED AS A VOLUNTEER AND MY CONTRIBUTIONS OF TIME AND MONEY TO HIS FOOD PANTRY.

牧師の「謝罪」文は、現在は削除されているそうです。

「ハリケーンは同性愛者(やLGBTの人々)に対する神罰」みたいな非科学的なデマを飛ばす人たちもいいかげん問題だけど、この教会の場合、被災者支援の人的資源を直接的に減らしているという点でさらに有害なのでは。それから牧師が書いた「謝罪」文、これって典型的な「謝らない謝罪(Non-apology apology)」だと思いました。トラブルの原因を「誤解」のせいにすることで誰の責任なのかをあいまいにし、いったい何に対しての「謝罪」なのかを説明していないあたり、ただの姑息な自己弁護でしかないと思います。だいたい、ローマ法王が「ユダヤ教徒とキリスト教徒は一つの神の家族」と述べ、「キリスト教徒は同性愛者の人々に対する行為を謝罪するべき」と主張している時代に、まだ自分たちがヒックスさんにしたことの何が悪いのかわかっていないとはびっくりだわ。この地域の人はボランティアの拠点を他に移した方がいいんじゃないの?