石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

ポーシャがセガールのセクハラ告発 エレン「妻を誇りに思う」

Portia De Rossi (before wedding Ellen DeGeneres)
Portia De Rossi (before wedding Ellen DeGeneres) / Pulicciano

女優のポーシャ・デ・ロッシ(Portia de Rossi)がアクション俳優のスティーブン・セガール(Steven Seagal)から過去にセクハラされたことを公表。ポーシャの妻のエレン・デジェネレスが、この告発に踏み切ったポーシャのことを「誇りに思う」とツイートしています。

2017年11月9日、エレンが急にTwitterにURLを貼って「わたしの妻を誇りに思います」("I’m proud of my wife. ")とツイート。

何ごとかと思ったら、そのURLは妻のポーシャによるツイートで、内容はこんなだったんでした。

訳:「わたしのスティーブン・セガール映画の最終オーディションは、セガールのオフィスでおこなわれた。彼はわたしに、スクリーンの外でのケミストリーがいかに重要かを説き、わたしを座らせて、彼のレザーパンツのジッパーを下ろした。わたしは走って逃げだし、エージェントに電話した。彼女は動じもせずに言った。『ああ、彼があなたのタイプかどうかわからなかったんだよね』」。

Vultureによると、セガールはこれ以外でも複数の女性から性的加害で告発されているとのことで、他の被害者には女優のジュリアナ・マルグリーズ(Julianna Margulies)、リサ・ゲレロ(Lisa Guerrero)、ジェニー・マッカーシー(Jenny McCarthy)、そしてセガールの元アシスタントなどがいるそうです。

このセクハラ男像は映画の中でセガールが演じているヒーローたちとはずいぶん食い違っているようにも見えますが、力や「男らしさ」の誇示という点では、実はさほど矛盾してもいないんじゃないかという気もします。だいたい、セガール映画のメインターゲットであろう男性の観客たちに、この一連のセクハラ事件の何が悪いのか把握できる人がそうたくさんいるとも思えないんですよあたしには。というのは、Briereらがカナダの男子大学生三百数十人を対象に実施した調査で、「誰にも知られず、絶対に罰せられる恐れがないとして、あなたが以下の行為をする可能性はどれぐらいだと思いますか」という質問をしたところ、レイプや性的強制(女性が望んでいないことを無理やりやらせること)に関する回答はこんなだったらしいからです。

  • レイプも性的強制もするかもしれないと答えた者が28%
  • レイプはするかもしれないが性的強制はしないと答えた者が2%
  • 性的強制はするかもしれないがレイプはしないと答えた者が30%
  • レイプも性的強制も絶対にしないと答えた者が40%

レイプも性的強制も絶対にしない(少なくともそう自己申告した)人が40%しかいなかったということは、残りの60%はバレなければこのどちらか、または両方をやる可能性があるというわけで、つまり過半数が性犯罪者予備軍だということになります。必ずしも世界中の全ての男性に当てはまる数字だとは言えないにしても、相当怖い話ですよこれって。

結局のところ、セガールもハーヴェイ・ワインスタインもケヴィン・スペイシーも、その他最近性暴力で告発されている数々の著名人も、特に人間離れした異様な怪物だというわけではなくて、単にこの60%の側に属する男性のひとりだったというだけの話なんじゃないかと自分は思っています。そういう人が権力で口封じをできる立場におさまったら、そりゃ、やるわな性犯罪を。そして男社会は平気で隠匿に加担するわな、バレなきゃ問題ないことだと半数以上が思ってるんだから。

とどのつまり、男性(の、おそらくは過半数)の中にはびこり続けている女性への侮りや性犯罪被害の軽視、そしてそれらを「男らしい」態度だとする社会通念を何とかしない限り、こうした事件はいつまでも繰り返されるんじゃないでしょうか。そんなわけで、まず今回告発に踏み切ったポーシャのことを、いちファンとして誇りに思うわ。こういうのって声をあげるだけでも被害を再認識してしまってけっこうな心理的ダメージをくらうものなので(だから被害を公表した人だけがエラいとか立派だとかいうわけでは全然なく、沈黙を保つことで自分を守り抜いてサバイバルするのも同じぐらい立派な戦略だと思います)、エレンに労ってもらってよく休んでくれてるといいなと思います。あと女は(いや正確に言うと、ジェンダーによらず力弱きものは誰でも)全員心の中に小さいリスベット・サランデルを置いといた方がいいと思うわ。まったくもって洒落になりませんよこの状況。