石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

女性はヘテロ男性よりゲイ男性の方に心を開きやすい(米研究)

f:id:miyakichi:20180303133400j:plain

米テキサス大学の研究で、異性愛者女性は異性愛者男性と話しているときより、ゲイ男性と話しているときの方がよりくつろいだ親密なやりとりをするという結果が得られたそうです。

詳細は以下。

Study: Women More Comfortable Opening Up To Gay Men Than Straight Guys | NewNowNext

この研究はEric M. RussellらがPsyPostに発表したもので、論文のタイトルは"Women Interact More Comfortably and Intimately With Gay Men—But Not Straight Men—After Learning Their Sexual Orientation"といいます。以下でpdfで読むことができます。

Women Interact More Comfortably and Intimately With Gay Men—But Not Straight Men—After Learning Their Sexual Orientation

この研究で実施された実験はふたつ。一つ目は、計153人の異性愛者女性に対し、見知らぬ男性と会話している状況を想定して、そのときにどれぐらい快適と感じると思うかを7段階スケールで答えてもらうというもの。この調査はオンラインでおこなわれ、被験者にはまず、以下のシナリオが伝えられましたました。

  • シナリオ1「待合室の中で、知らない男性と一緒に座っているところを想像してください。部屋の中にいるのは、あなたとその男性のふたりだけです。それから、彼があなたに話しかけるところを想像してください」

続いて、次のシナリオが。(かっこ内の単語はどちらかひとつが伝えられます)

  • シナリオ2「この男性とことばを交わしている間に、あなたはこの男性が実のところ【ストレート/ゲイ】だと気づきました」

すると、シナリオ2で相手がゲイだと知った女性の快適度は平均で5.63だったのに対し、相手がストレートだと知った女性の快適度の平均は4.46だったとのこと。

もうひとつの実験では、計66組の初対面の男女ペアのやりとりをを隠しカメラと隠しマイクで記録するという手法が使われました。やり方が手がこんでいて、箇条書きにすると以下のようになります。

  1. 66人の異性愛者女性と、66人の男性(うち34人が異性愛者男性、32人が同性愛者男性)から、ランダムな男女ぺアを66組作る
  2. そのペアに、大学のラボの観察室に入ってもらう
  3. ペアに対し、研究助手が、これは見知らぬふたりの人間がさまざまなトピックについてどのように伝達するか調べる実験だと説明
  4. 研究助手、実験に必要な箱(トピックが書かれた紙片が入っていて、くじびきのように引けるもの)を取りに行くと言って5分間席を外す(この5分間を『Time 1』とする)
  5. 5分後に箱を持った研究助手が帰ってくるが、実は箱の中の紙片には全部、「自分の理想の恋人について相手に伝える」というトピックが書かれている(男女ペアはそのことを知らない)
  6. 男女ペアはそれぞれ、自分の理想の恋人について、パートナーに向かって60秒ずつ話す(ここで相手の性的指向がわかる)
  7. 研究助手、書類を印刷してくると言ってまた5分間席を外す(この5分間を『Time 2』とする)
  8. 男女をそれぞれ別の小部屋に入れ、7段階評価の質問紙で、「この実験でペアになったパートナーをどれぐらい信用したか」、「パートナーとのやりとりをどれぐらい楽しいと感じたか」、「パートナーと友達になりたいと思ったか」などの問いに答えてもらう
  9. その後、女性の参加者にだけ、Time 1、Time 2、パートナーと理想の恋人について話した時間の計12分間の録画記録を見てもらい、やりとりの最中に思ったことや感じたことを紙に書いてもらう

この後、研究者らがビデオ録画から女性参加者のパートナーに対する体の向きや、パートナーに視線を向けた秒数、パートナーに向かって話した秒数、ポジティヴな感情表出(微笑む、笑うなど)の頻度等を分析。結果として、相手がゲイだとわかる前と後で、女性のボディランゲージが有意に変化していると判明したんだそうです。論文に添付されている、ソファーに並んで座っている男女ペアの写真がとてもおもしろくて、相手が異性愛者男性だとTime 1でもTime 2でも女性の体の向きは変わらないのに、相手がゲイ男性の場合、Time 2で体ごと相手の方に向き直っていることがはっきり見て取れます。女性がパートナーに視線を向けたり話しかけたりした秒数も、笑う頻度も、相手がゲイ男性だとわかった後では有意に増えていたとのこと。また、女性参加者らの報告を分析した結果、ゲイ男性と対話した女性の方が、異性愛者男性と対話した女性よりも快適だと感じており、ゲイ男性はヘテロ男性より親密な相手と認識されていたということがわかったそうです。

NewNowNextによれば、このような結果が出た理由について、ラッセル氏は以下のように説明しているとのこと。

「ストレート女性とゲイ男性は、自分たちの間の友情を、楽しくて、自分自身でいられて、ジャッジされたり期待されたり一方的に性的興味を持たれたりせずに親密な会話が交わせる安全地帯とみなす傾向があります」と彼は説明した。ラッセルは、ストレート男性のあまりに多くが女性からの性的関心を過剰評価してしまうため、女性はいつも警戒し続けざるを得ないのだと述べている。

“Straight women and gay men likely see their friendships as safe spaces where they can have fun, be themselves, and engage in intimate conversations without fear of judgement, expectations, or one-sided sexual interest,” he explained. Russell says that, because so many straight men “overperceive” sexual interest from women, it forces women to keep their guard up.

異性愛者の男性には女性からの性的関心を過剰評価する、つまり義務的な友好性を性的関心と取り違える傾向があるというのは、 Haselton (2003)*1などによって既に指摘されています。だからこの説には一定の説得力があるんじゃないかと。

あと論文読んでておもしろかったのが、ラッセルはもしパートナーの組み合わせが異性愛者男性と同性愛者女性だった場合、同じような結果は得られないだろうと予測していること。異性愛者男性は女性より性に対して熱心(Schmitt et al., 2003) *2で、性的経験について楽観的 (Clark & Hatfield,
1989; Li & Kenrick, 2006)*3*4であるため、対話の相手がレズビアンだとわかったからといってより気楽な気分になったり友情を築きたいと思ったりすることはなさそうだというのが彼の意見です。これも当たってそうな気がするなあ。よく「男と女の間に友情は成立しない」なんてことを言いたがる人がいますが、結局それって「『ヘテロ男と』女の間には友情は成立しにくい」とでも言った方が正確なのかもしれませんね。

*1:Haselton, M. G. (2003). The sexual overperception bias: Evidence of a systematic bias in men from a survey of naturally occurring events. Journal of Research in Personality 37, 34-47.

*2:Schmitt, D. P., Alcalay, L., Allik, J., Ault, L., Austers, I., Bennett, K. L., . . . Zupanèiè, A. (2003). Universal sex differences in the desire for sexual variety: Tests from 52 nations, 6 continents, and 13 islands. Journal of Personality and Social Psychology, 85, 85–104

*3:Clark, R. D., & Hatfield, E. (1989). Gender differences in receptivity to sexual offers. Journal of Psychology & Human Sexuality, 2, 39–55

*4:Li, N. P., & Kenrick, D. T. (2006). Sex similarities and differences in preferences for short-term mates: What, whether, and why. Journal of Personality and Social Psychology, 90, 468–489.