オランダで66年間続いているドナルドダックの漫画に、初めてレズビアンキャラが登場すると決まったそうです。理由は、ふたりママ家庭の10歳児が、この作品に同性愛者のキャラがまったくいないのは「ばかげている」と指摘したから。
詳細は以下。
オランダは2001年に世界で初めて同性婚を認めた国です。2015年のeurobarometerの調査*1では、回答者の96%が、同性愛者や両性愛者が異性愛者と同じ権利を持つことに同意すると答えています。ちなみに同性同士の関係は何ひとつ悪くないと答えた人は91%、ヨーロッパ中で同性婚を認めるべきだとした人は91%。Kuyper(2015)による調査では、オランダで同性愛者の知り合いがひとりもいない人は7人にひとりしかおらず、つまりはそれだけ同性愛がオープンにされていて、オランダ人の65%が同性カップルが養子をとることに賛成しているという結果が示されています。*2。
で、そのオランダで、レズビアンカップルを母に持つFennaさん(10歳)が、大好きなドナルドダックの漫画を読んでいて疑問に思ったのだそうです。「なぜゲイやレズビアンが出てこないの?」って。
Fennaさんは同国の子供向けニュース番組で、自分の父親たちと母親たちはゲイとレズビアンで、それが単なる普通のことだというのが大切なのだと話し、こう続けました。
「でもダックバーグ(訳注:ドナルドダックたちが住む町)だと、まるでそういう人は全然存在しないみたい」
彼女は別に漫画の主要キャラをゲイにしてほしいと言っているわけではありません。そんなことをしなくてもモブキャラとして背景に描かれているカップルの中にゲイがいるだけで変化は起こせるし、LGBT+キャラがひとりもいないのは「ばかげている」というのが彼女の意見です。
番組を通じてFennaさんの要望を知った出版元は、デート中の男女として描かれるはずだった脇キャラを女性同士のカップルに変えると発表しました。もう少し具体的にいうと、以下のツイートの添付画像の中で指さされているカップルが女性同士に描き直されることに決まったのだそうです。
Voor het eerst lesbisch paar in Donald Duck https://t.co/EFrkfdJ43F
— NOS (@NOS) 2019年2月25日
McIntosh(1988)は、白人特権のひとつは「自分の人種が描かれているポスター、絵はがき、絵本、グリーティングカード、人形、おもちゃ、子供向け雑誌を簡単に買うことができる」ということだと述べました*3。「自分の人種」のところを「自分と同じ性的指向の人間」に置き換えれば、これはそのまま異性愛者特権になります。オランダのドナルドダック漫画は、66年かかってようやくそれを異性愛者だけの権利にしないところまできたのだなと思いました。同国でディズニーに代わってこの漫画を出版しているSanoma社は、米国本国よりちょっとだけ先を行っているのでは。