石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

米アニメ『Arthur』に同性婚登場 

Arthur's Off to School (Arthur [Brown]) (English Edition)

米公共放送(PBS)の子供向けブランド「PBS Kids」の長寿アニメが、男性同士の結婚式の場面を描きました。PBSが保守派からの抗議電話にどう対応しているのかについて、Prideが取材しています。

詳細は以下。

www.pride.com

まず、結婚式の場面はこちら。

これは『Arthur』という1996年から続いているアニメの第22シーズン第1話で、2019年5月13日に公開されました。サブタイトルは"Mr. Ratburn and the Special Someone"(ラットバーン先生と特別なだれか)。 ラットバーン先生というのは8歳の主人公アーサー(Arthur)の先生で、このキャラがチョコレート店の店主パトリックと結婚するというお話です。

CBC Newsによると、この番組がゲイの登場人物を出したことと、それについて子供のキャラたちに「大騒ぎするようなことじゃない」というリアクションをとらせたことについて、ソーシャルメディアでは好意的な反応がたくさん見られたとのこと。しかしながら保守派の皆さんはもちろん大激怒です。ホモフォビックな憎悪団体「ワン・ミリオン・マムズ」はPBSのボイコットを呼びかける署名を開始していますし、PBSに直接抗議の電話をかけている人もいます。

Prideは、PBSの視聴者サービス部門で電話を受け付けている「トビアス」(仮名)氏に、『Arthur』への苦情に対する対応などについて質問。このトビアスさんの答えが面白くて、ちょこっと抜き出して箇条書きにするとこんな感じになります。

  • PBSのメイン視聴者は(米国の中でも保守的な)中西部の人たち
  • 2年前にトランスジェンダーのティーンについての番組をやったときには、(電話をかけてきた)ある女性から「同性愛者はテレパスで、危険な波動を発信している」という主張を20分間聞かされた
  • 『Arthur』について苦情を言ってきた人は「ゲイは間違っていて、焼かれるべきだと思う」と言い出した。番組についてのフィードバックは受け付けますが同性愛についてのフィードバックはお受けしませんと答えた。そしたら切られた
  • (『上司を呼べ』と言われた場合の対処について)今日は上司が不在なので、同じ部署の他の人が電話を取って、相手が興味をなくすまで「聞いてます、メモをとっています」と言いながらうなずきつづけた
  • (結婚式のエピソードそのものについて)『Arthur』は周縁に追いやられている人たちの経験をノーマライズする番組。これまでにもPTSDや自閉症やメンタルヘルスなどを取り扱ってきた。ちっちゃな動物の子供たちが先生の結婚式に出て、笑うのが先生のダンスだけだというのは、ゲイが話の目玉になっている『Glee』等よりさらに一歩進んでいると思った
    • 比較的退屈な結婚式だったけれど、そこがかえってエキサイティングだったと思う。わざとらしく「うわあ! 男が男を好きになってもいいんだ!」みたいなことをする必要はないんだって感じで

トビアスさんはまだ26歳で、このような電話を受けるときには番組を見ている小さな子供たちのことを思い浮かべるのだそうです。かつての自分がそうだったように、「知らず知らずのうちに、『恋愛関係にあって、それについていちいち説明しなくていいふたりの男性(またはネズミでも何でも)』のイメージを」頭にたくわえつつある子供たちのことを。PBSは米国でもっとも弱い立場に置かれている人たちのために働く局で、だからここで働くことが気にっているのだと彼は説明しています。

日本のご長寿アニメでこういう展開が出てきたら、別にクリスチャンでもないのに「ゲイじゃなかった(と自分たちが思っていた)キャラを突然『ゲイにする』のはポリコレの圧力だー」とかなんとか言って怒り出す人が出てきそうだなあ。参考までに、『Arthur』の原作絵本の作者、マーク・ブラウン(Marc Brown)氏が今回のエピソードについて以下のように話していることを記しておきます。

「『Arthur』には、あらゆる種類のキャラクターを扱うチャンスがあります。わたしたちは彼らの生活を掘り下げ、彼らがどのように家族と結びついているのかを見たいと思っています」

"With Arthur, we have an opportunity to deal with all kinds of characters. We go into their lives and we want to see how they're connected with their families,"

「アートは人生を反映し、人生はアートを反映します。子供たちには、世界で何が起こっているのかを見る必要があります」

"Art reflects life. Life reflects art. And I think that kids need to see what's happening in the world."

ブラウン氏の談話の動画はこちら。