石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

レズビアンカップルがキスで連行され罰金受ける パナマ

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中米のパナマ共和国で、車の中でキスしていただけのレズビアンカップルが警察によって5時間以上拘束され、罰金を科せられました。警官らは理由の説明もせずに彼女らを連行し、犯罪者のように手錠をかけて治安判事の前に連れて行ったとのこと。

ちなみに同国では同性愛は違法ではありません。

詳細は以下。

elclosetlgbt.com

この事件が起こったのは2020年9月2日のこと。具体的な経緯は、このカップルのひとりであるマリアン(Marian)さんが以下のツイートから始まる一連のスレッドで詳しく説明しています。

スレッドの内容を簡単にまとめると、この日マリアンさんと恋人のダニ(Dani)さんは昼食を食べに出かけていて、駐車した車の中で1回キスしたとき、通りすがりのふたりの警官に窓を叩かれたのだそうです。警官らは何の理由もなく身分証を要求。マリアンさんが理由を問うと、彼女が公共の場で恋人にキスするのは「不道徳な行為」だからしてはいけないと言われ、交番に連れて行かれたのだそうです。

警官らはこれは逮捕ではないと言いながらも、何の説明もせずにマリアンさんらを1時間以上交番に留め置いたとのこと。ちなみに彼らはふたりに対して権利の読み上げもせず、自分たちの身分証の呈示も嫌がり、Covid-19に対する予防措置もとってくれなかったそうです。しまいに警官らは「警官を見下した罪」でふたりを起訴すると言い出し、犯罪者にするように手錠をかけて、治安判事のもとへと連行。結局、マリアンさんとダニさんは合計5時間以上の拘束と罰金を経てようやく釈放され、こうしてTwitterで怒りをぶちまけるはめになったとの由。

せっかくだからスレッド外のこのツイートも貼っとこう。写真内の段ボールに書かれていることばは、「警察はわたしを守らず、わたしへの職務も果たさず、ハラスメントをする」の意です。

繰り返しますけど、現在のパナマでは同性愛は違法ではないんですよ。1949年からあったソドミー法は、2008年に廃止されています。平等な結婚に関しては教会の根強い反対もあってまだ揉めているところなんですが、少なくとも駐車した車の中で恋人同士がキスひとつ交わしただけで犯罪とみなすような法体系にはなってないはず。完全な嫌がらせですよ、こんなもん。

Twitterではハッシュタグ#JusticiaParaDaniyMarianでこの事件に抗議する動きが始まっており、署名運動も起こっています。そして警察からは以下のように、「このカップルに謝罪し、不幸な出来事についての調査を開始する」、「人権の尊重は、保護と奉仕とい警察の使命の基本」などとする声明が出されました。

事件そのものは大概ひどいけど、警察からすぐ出てきたリアクションが「ご不快に思われたのなら謝罪します」みたいな謝罪もどき*1でも、「差別の意図はありませんでした」的なとんちんかんな自己弁護*2でもなく、「人権の尊重がわれらが使命の基本」という(たとえタテマエとしてではあっても)まっとうなものである点は日本よりマシかもなあ。Twitterで怒りまくったマリアンさん、グッジョブ。

*1:なぜこれがアカンのかについては、このへんをどうぞ:Sorry not sorry: Non-apology, fauxpology, unpology, and other names for hollow apologies

*2:なぜこれがアカンのかについては、このへんをどうぞ:"I'm Sorry If I Caused Offense": How Not to Apologize | Psychology Today