2020年10月20日から、米国の総合金融サービス会社、シティグループの銀行が発行するクレジットカードなどで、トランスやノンバイナリーの顧客が(法律上の名前を変えずとも)自分で選んだファーストネームを使えるようになりました。
詳細は以下。
マスターカードがシカゴのBMOハリス銀行とミシガン州のスパービア・クレジット・ユニオンの顧客に対し、自分で選んだ名前をクレジット/デビット/プリペイドカードに記載できる"True Name"というオプションの提供を始めたのが2019年。シティは今回それに加わり、米国の大手銀行で最初にこのようなサービスに乗り出した会社となりました。
なぜ米国の金融界で今こういう動きが起こっているのかというと、本人のジェンダー・アイデンティティとカードに記載された名前のジェンダーが一致しない場合、ハラスメントに遭遇したり、金融商品が利用できなかったりするリスクがあるからです。そして、現状では法律上の名前を変更するには多額の費用(時として1000ドル以上になることも)や裁判所の命令(これにも金がかかる)が必要で、それが障壁となって名前を変えられずにいる人もいるからです。実際、New York Timesによれば、NPO団体「National Center for Transgender Equality」が実施した2015年の調査で以下のような結果が得られているとのこと。
- トランスジェンダーの人々の3分の1が、外見と合致しない名前や性別での身分証明書を提示した際、嫌がらせやサービスの提供拒否を受けたと報告している
- 法律上の名前を変更していないトランスジェンダーの人々の3分の1以上が、名前を変えていないのは金銭的な余裕がないからだと報告している
そこで顧客がもっと安心してカードを使えるようにしようということで始まったのがこの"True Name"。なお、マスターカードのCheryl Guerin氏によると、法律上のファーストネームは「バックグラウンドで」アカウントに残されるんだそうです。
このニュースを見て真っ先に思い出したのが、メキシコのトランス女性たちがコロナ禍で困窮しても書類上のジェンダーが外見と一致しないためお金が借りられず、困っているというニュースでした。
システムを柔軟にすることで、今後こういう不都合がどんどん減っていくといいと思います。