石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

大学教員が講義で「女性か『おとこおんな』か」クイズ実施 学生が解任要求

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ニューヨーク州立大学ジェネセオ校の教員が社会学の授業中、トランス女性とシス*1女性の顔写真を並べて「女性(Female)か『おとこおんな(Shemale)』か」を当てさせるというクイズを実施。学生からの抗議で、校長が調査すると発表しました。

詳細は以下。

University Officials Are Looking Into A Professor Who Gave Students A Quiz Called "Female Or Shemale"

本題に入る前に、ちょっと語句の説明を。上でとりあえず「おとこおんな」という訳語をあてた"shemale"という単語は、英英辞書では「異性装者*2」、「トランスセクシュアル(の、特に職業がセックスワーカーの人)*3」、「女役の男性同性愛者*4」などを指すとされている俗語です。そして、トランスジェンダーのコミュニティからは、トランスの人々をこの語で呼ぶのは侮辱的だという声が以前から上がっています。元記事でも触れられていますが、2014年にリアリティ番組『ル・ポールのドラァグ・レース』がコンテスタントに女性の写真を見せて「女性(Female)か『おとこおんな(Shemale)』か」を当てさせるというゲームをやったときには、トランスフォビックだという批判が起こり、Logo TVが謝罪声明を出しました

にもかかわらず2017年10月18日、ニューヨーク州立大学ジェネセオ校で、非常勤講師(adjunct lecturer)のデイヴィッド・ソルベロ(David Sorbello)氏がこれとそっくりなクイズを学生にやらせたんです。写真は以下。

この日の授業のトピックはジェンダー、セクシュアリティ、性自認などだったとのこと。ソルベロ氏は学生たちに写真の人物が女性(Female)なのか「おとこおんな(Shemale)」なのか書くよう求め、しかるのちクイズの「答え」を教えたものの、このクイズについてのディスカッションやレクチャーは特におこなわなかったそうです。なお彼はこのクイズ中、「これはきみたちみんなが酔っぱらいすぎて間違ったのを(the wrong one)お持ち帰りしないようにするためのレッスンだ」、「(写真を見ながら)絶対にあんたとはバーに行きたくないね」などと言っていたとのこと。

社会学っていつから人の性やジェンダーに「間違ったの」とそうでないのがあると教える学問になったんでしょうか。それにこの先生、クラス全員がシスジェンダーの女性を恋愛対象とする人だと決めつけてない? 異性愛者の女子生徒はそもそも女性をお持ち帰りしないはずでは?

授業後には何人かの学生がソルベロ氏にこのクイズの目的について聞きに行ったのだそうですが、生徒のひとり、Jessica Friedmanさんによれば、氏の答えはこんなだったそうです。

彼はわたしに、この講義は『一部はユーモアで、一部は性的二形について教えている』のだと言いました。……わたしがこれまで習った先生たちは、差別的にもトランスフォビックにもならずに性的二形について教えることができたんですけど。

he told me the lecture was "part humor and part to teach sexual dimorphism." ....my professors have managed to teach me about sexual dimorphism without being discriminatory and transphobic

同校の学生自治会はソルベロ氏の解雇を求める署名活動を始め、2017年10月24日現在で200筆以上が集まっています。またデニース・A・バトルズ(Denise A. Battles)校長は10月20日、「事態を真剣に非常に受けとめ、なんらかの措置が必要であるかどうか、必要だとしたらどのような措置を認めるべきかを判断するための事実を集めている」との声明を発表しています。

このニュースを読んで最初に思い出したのは、Everyday FeminismHow to Apologize When You Get Called Outという記事のことでした。このようなクイズを学生にやらせることが「ユーモア」であり問題ないとお考えの方は、一度同記事の日本語訳、「それ差別ですよ」といわれたときに謝る方法 - feminism mattersをお読みになってみられるとよろしいかと思います。以下、ちょっと引用します。

2年前、「1日だけクィーン」という動画を作りました。ドラァグクィーンの格好をして、ニューヨークを歩き、街を歩いている人たちに、私が男に見えるか女に見えるか聞いたのです。私はこの動画はおもしろいと思ったし、友達もめっちゃウケると言っていたし、Youtubeの再生回数もかなり多かったんです。この動画がかなり差別的だと誰かに言われたのは、動画を公開して1年ぐらい経った後でした。「ねぇ、これすごくトランスフォビックで最悪!なんでこんなことやろうと思うの?」

もちろん、私の最初の反応は防衛的なものでした。「え、何の話?私はトランスフォビックじゃないのに、何言ってるの?トランスの友達だっているし!そんなつもりでやったんじゃないし!ジョークじゃん!あまりにパーソナルにとりすぎてるんじゃ…」つまりやっちゃいけないことは全部やりました。

その後、そういうことをする代わりに、立ち止まって話を聞きました。そうすると、差別だと指摘してきた人たちが伝えてくれました。もしあなたがトランスだとして、周りの人たちはいつもあなたのジェンダーはどっちなのか分類しようとしていて、それはトランスにとっての日常的な経験でバトルであって、全然楽しくなんかないし、超失礼だと。誰かのジェンダーを分類するのを、しかもゲームとしてやってしまうのは、そういうことをやっても構わないというメッセージを動画の視聴者に送っていると。これは、トランスの人たちの「本当のジェンダー・アイデンティティ」を問い詰め、暴行を加えたり殺人をしたりするということが日常的に起こっていることを考えれば、本当に、本当に最悪だと。

HRCによれば、米国で2016年に暴力をふるわれて殺されたトランスジェンダーの人は少なくとも23人。2017年には、9月までの時点で既に23人殺されているそうです。ご参考まで。

*1:シス(cis)とは"cisgender"、つまり「性自認が生まれたときの身体の性と合致している」という意の形容詞です。cf.cisgender | Definition of cisgender in US English by Oxford Dictionaries

*2:cf. Oxford English Dictionary

*3:cf. Oxford Advanced Learner's Dictionary

*4:cf. New Oxford American Dictionary