石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。

ケーキ屋の次はこれか。印刷業者、LGBTチャリティ用小冊子の印刷拒否 米イリノイ州

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米国イリノイ州の印刷店オーナーが、宗教的信念に反するという理由で、LGBTチャリティ用パンフレットの印刷を拒否しました。やれやれ、ケーキ屋や花屋やウエディング写真屋の次はこれですか。

詳細は以下。

www.pinknews.co.uk

この印刷店「ヨーク・プリント・ショップ(Yorke Printe Shoppe)」のオーナー、ブラッド・スカル(Brad Scull)氏は、このパンフレットの印刷をいったん引き受けてから、それがシカゴのチャリティ「LGBTコミュニティ・ファンド」のものだと知って断ったのだそうです。

スカル氏本人の説明によれば、自分にはゲイの友人やビジネス仲間がいるのだからゲイには「何の反感も」ないのであり、単にゲイの「ライフスタイル」を「宣伝」するということが問題だとの由。同性愛はライフスタイルじゃなくて性的指向だし、こういう文脈で「ライフスタイル」という語を使うのはホモフォーブの定番なんだけど、ゲイの友人とやらには指摘されたことがないのかしらね。本当に友人なんですか、それって。

同ファンドのコミュニティ・ディレクター、デボラ・シュナイダー(Deborah Schneider)氏は、スカル氏からの拒絶に「ショックを受けた」と話しています。多くのNPOの仕事を手掛けているシュナイダー氏は、これまでおよそ20年間スカル氏の印刷店を利用してきたのだそうですが、今後は一切の印刷を他の店で行うとのことです。

この手のニュースに対して、「LGBTはLGBTでも使える店に行って、棲み分ければいい」みたいなことを言う人がよくいます。そういう意見を見かけるたび、あたしは映画『ドリーム』原作本の、黒人女性のメアリー・ジャクソンが陳情の末ようやく白人用高校に入学したときのこのくだり(pp. 227-228)を思い出しています。

長く閉ざされていた門をくぐったメアリーを待っていた衝撃は、まるで予想外のものだった。
ハンプトン高校は、崩れかけたかび臭い建物だった。
メアリーはあ然とし、思わず自分に問いかけた。これが、この町に住む黒人の子どもたちを長年拒み続けていた場所なの? この荒れ果てた古い建物が? 白人たちが自分を入れまいとしてあんなに躍起になるくらいなのだから、メアリーはそこがおとぎの国のような場所にちがいないと思っていた。なのに、これ? なぜ資金を合わせて、黒人と白人、両方の生徒のために立派な学校を建てようとしないのか。南部じゅうの自治体が、効率の悪い二重の学校制度を固持していた。そのせいで、黒人のみならず白人の最貧困層までが害をこうむっていた。人種差別の残酷さは、往々にしてばかばかしさと背中合わせだった。複雑で独善的なルールや差別は、自分たちは調和しがたくかけ離れていると教え込まれた人々の共通の利益を損なっていたのだ。

つまり分断はコミュニティ全体の効率を落とし、利益を損なうんです。それからもうひとつ、同じ本のこちらの部分(pp. 169-170)も思い出しますね。

アメリカを訪れた外国人はしばしば、この国のカースト制度を目のあたりにした。1947年、ミシシッピ州のあるホテルは、国際会議に出席するためにこの週にやってきたハイチの農務大臣の宿泊を拒否した。同じ年、南部のあるレストランは、インド独立の父マハトマ・ガンジーの主治医を、肌の色が黒いことを理由に店から締め出した。(引用者中略)1951年、ボンベイのある新聞は「インドでは追放された不可触民制がアメリカでは崇拝されている」との見出しを掲げ、アメリカ外交団の面目をつぶした。

同書によればこの「不可触民制」は米国の面目をつぶすのみならず、世界中の新興独立国に対して「自分たちと同じ肌の色の人をこうもあからさま差別している国が信用できるのか」という疑念を抱かしめ、米国のリーダーたちも人種統合を進めざるを得なくなったとのこと。LGBTの人々を新たな不可触民にして不可触民OKの店に行かせれば問題はなくなるだろうなんていうのは、あまりに呑気で、かつ過去から何も学んでいない考え方だと言えましょう。てなわけであたしはこの手のニュースにつきまとう「棲み分ければうまくいく」説には100%反対です。PinkNewsによればイリノイ州の人権法(Human Rights Act)は性的指向による差別を禁じているとのことで、今回の印刷店のしたことがどのような結果を迎えるのか、続報を見守りたいと思います。

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