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レズゲーとしては物足りない……
カーリングを題材にするという珍しい切り口のエロゲ。6人のヒロインのうち、とあるキャラのルートだけが♀♀ルートです。しかしこのルート、だらだらと長いわりにたいしたエピソードの積み重ねもなく、シナリオも微妙に矛盾しています。おまけにエロ描写が「バランス悪い」「陳腐」の二重苦。ただし、『その花びらにくちづけを』シリーズのぺこさんによる絵はすばらしく可愛いので、それを目当てに買うという手はありますけど。
男女ルートの部分に関して言うと、前半は面白いのに後半グダグダなシナリオがすべてをだいなしにしています。メインルート3本のうち2本が既存の少女漫画のパクリ(よく白泉社から訴えられませんでしたねこれ)、しかもご都合主義の連発というのはどうよ。全体的なほのぼの具合やキャラの立て方は悪くないだけに、この後半でのシナリオ失速がかえすがえすも残念です。
よかったところ
- 絵
- 前半のテンポのよさ
- カーリングという種目の珍しさ・面白さ
- 主人公がいい奴(性格はいいし、ただのヘタレではなく積極的な行動もとる)
- 脇キャラたちの設定
- 3人の男性サブキャラたちがそれぞれ「オネエ」と「二次元萌え」と「ナルシスト」だという設定がユニーク。主人公以外の男がヒロインたちとくっつかないようにするための方便と言えばそれまでなんだけど、皆キャラが立っていてよかった。
- 軍人口調のお母さんもナイス。
- のんびりムード&家族や仲間の中で受容される「恋」の描き方(男女恋愛も女女恋愛も)
- これはすごくあったかくてよかったです。
悪かったところ
- ストーリーが後半グダグダ
- 小雪/冴子ルートの後半は川原泉著「銀のロマンティック……わはは」(白泉社)のパクリ。カーリングはどこ行ったの?
- 麻美/伊織ルートの後半は川原泉著「大地の貴族」(『美貌の果実』(白泉社)に収録)のパクリ。カーリングはどこ行ったの?
- 朋美/咲ルート後半には山場がなく、起承承承承承承承承承承結、みたいな話。長いわりにたいしたクライマックスがないというのは読んでてキツかった。
- ♀♀ルートの内容が今ひとつ
- 告白の成就がご都合主義的すぎだし、そこまでのストーリーでのキャラの台詞とも矛盾してる。もっと緻密にエピソードを積み重ねた末でドカンとくる告白&エロにしてほしかった。
- ていうか♀♀エロの中身もやっつけ仕事すぎ。初々しい告白&初キス(この絵はほんとに可愛いです)の次のショットがいきなり全裸まんぐり返しって、バランス悪すぎない? しかもその直後に貝合わせ突入って、いかにも「ヘテロが妄想するところの嘘くさいレズエロ」的で陳腐そのもの。
- 同性愛を「性癖」と称しているところにはうんざり。(参考:セーヘキ、セーヘキ、セーヘキ - に し へ ゆ く 〜Orientation to Occident)
- どこにも「百合」「レズ」と謳ってない作品で唐突に♀♀ルートが出現するというのは、レズゲーマーにとってもレズゲー嫌いのユーザにとっても不親切かも?
- 方言がおかしい
- 無理に「〜さ」「〜べや」などの語尾を連発してるところと、そうじゃないところとのムラがありすぎ。あと、キャラたちに方言を喋らせるのなら、「手袋をはめる」じゃなくて「手袋をはく」になるだろうし、卑語も「お○○○」ではなくて「ま○○○」になるのでは。アクセントが全部共通語のままなところも、中途半端すぎて変。いっそ全部共通語にしとけばよかったのに。
その他注意点
- 一見ハーレムゲーっぽく見える作品ですが、ルート確定した後はひたすらモノガマスなストーリー展開で、複数プレイは夢オチの1回のみ。ハーレム展開目当ての方はご注意を。
- Hシーンは全般的に尺が短く淡泊です。
まとめ
どのルートも前半は面白いのに、後半でありえないほど失速してしまっているところが惜しい。レズゲー部分に関しても、後半の展開があまりにもご都合主義的で盛り上がりに欠けると感じました。安易なパクリやダラダラ展開をやめて、ストーリー後半でもカーリング主体のお話を緻密に積み上げ、なおかつ前半のテンションを保ってくれればすばらしかったのになあ、と思います。