石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『まんがの作り方(4)』(平尾アウリ、徳間書店)感想

まんがの作り方 4 (リュウコミックス)

まんがの作り方 4 (リュウコミックス)

凪の中にも嵐の気配

新人漫画家・川口&森下の脱力系百合恋愛を綴るラブコメ第4巻。3巻ほどの大揺れはないものの、川口と森下の、そして森下と武田の間の微妙な齟齬が面白かったです。行動面でも森下が上京して遠距離恋愛になるわ、女性編集者・吉永が森下に迫りまくるわと、凪の中にも嵐の気配が。次なる波乱に向けての下地づくりの巻なのかも。

齟齬いろいろ

まず森下と武田については、24話でのみごとに噛み合わない会話が特に楽しかったです。表面への出方が違うだけで、実はこの2人、根っこのところのボケ具合は一緒なんじゃないかと思ってしまいました。川口と森下に関しては、ちょっとした会話のズレからいきなり遠距離恋愛に突入していくところにびっくり。あくまで、

会えない時間が愛育てる可能性にかけてみるのもいいじゃないですか

というノリでの遠距離化ではあるんですよ。でも、ほわほわした雰囲気の中にも小さな棘がやはりあって、なんとも痛気持ちよかったです。この微苦笑を誘うじりじり・もやもや感こそが、『まんがの作り方』の真骨頂なんじゃないかと思います。

吉永さんについて

「肉食系百合お姉さま」(裏表紙より)こと吉永は、森下の担当編集者。淡々としたボケキャラ主体のこの漫画には珍しく、アグレッシヴに森下を狙いまくっています。この人がお話をひっかき回すことで、もともと

漫画家と漫画家で百合ですが何か?(1巻帯より)

だった作品世界が、

漫画家と漫画家とアシスタントと担当編集者で百合ですが何か?(4巻帯より)

へとクラスチェンジ。この一気に複雑化した関係を、5巻以降でどう動かしていくのか興味しんしんです。

まとめ

比較的おとなしやかな巻ではありますが、笑いの中に仕込まれた不穏な気配が面白かったです。メインカップルのビタースウィートな恋が今後どうなっていくのか、知りたいような怖いような。