- 作者: なもり
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2012/07/23
- メディア: コミック
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第59話「異心出ん心」が白眉。
第59話に思わず「やられた」と思いました。「通じ合う心と心」みたいなものが美化されがちな百合業界で、ここまで反対方向のギャグをぶちかまして笑いを取るとは、さすが『ゆるゆり』。ガチ百合キャラ・ちなつの熱情を描きつつ、その熱情をも笑いにつなげていくところや、万感胸に迫るがごときコマの後であっさりボケをかましてみせるところなどもおもしろかったです。
通じない心と心
第59話「異心出ん心」の舞台はごらく部の部室(正確には茶室)。雑誌を読んだり宿題やったり大福食ったりと思い思いに過ごすいつものメンバーが、なぜか台詞を発さずに勝手に心中を察し合うという異色の内容です。その、わかったつもりでわかってない、全然以心伝心じゃないズレっぷりがおかしくておかしくて。百合界隈の一部にはびこる「女の子同士だからこそわかりあえるの……」みたいなくっだらねえ妄想を一撃で粉砕する破壊力があり、よかったです。
ちなつの暴走とその相対化
実はこの8巻を途中まで読んで、ちょっとうろたえたんですよ。というのは、王様ゲームの回でのちなつの暴走っぷりがあまりに激しく、これだと『ゆるゆり』を「平淡で平静で平熱」と評した5~7巻のレビューを訂正しなきゃいけないんじゃないかと思って。しかし、心配は無用でした。このキャラには、「欲情の空回りっぷりを大昔の少女漫画風の絵(しかもデッサン崩れた)でギャグ化する」というツッコミ手法が以前から用意されてたんでした。というわけで、ちなつの脳内こそ煮えたぎっていても、作品世界全体の淡々としたアホらしさ(誉め言葉)はやはり健在です。
感動の1コマのあとにあの展開
結衣が陸上部に転部しないと知った京子の安堵を示すコマ(p. 126の4コマ目)が、最高にいいんですよ。あえて顔を見せないアングルなど、心憎いったらありゃしません。しかし、ここで京子と結衣のカップリングに手放しでモエモエしようとしても、そうは問屋が卸さないというのがこの作品。次のページの「四人揃ってこそのごらく部」という台詞、そしてこの回のまさかのオチが、そのことをよく示しています。このいったんハシゴをかけておいてから外すタイミングの絶妙さは、さすがです。
まとめ
ハシゴの外し方がたいへんにうまい、いつもながらの『ゆるゆり』でした。「女同士だからわかりあえる」みたいな頭の悪そうなお約束を吹っ飛ばすギャグパワーも小気味よく、楽しく読めました。