石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『はやて×ブレード(18)』(林家志弦、集英社)感想

はやて×ブレード 18 (ヤングジャンプコミックス)

はやて×ブレード 18 (ヤングジャンプコミックス)

百合はいいけどオチがごちゃごちゃ

これは評価が難しいわ。綾那とゆかりの因縁対決を始め、百合っぽい部分はそりゃもうけっこうなお手前だったのですが、その後のまとめ方が駆け足過ぎ、かつ説明台詞多すぎ。おかげで「第1章完結」とあるわりにそれらしいスッキリ感はあまりなく、総合すると5段階評価で2.5ぐらいかと。

綾那とゆかりの決戦(または痴話ゲンカ)は絶品

ついに綾那とゆかりの因縁の対決が描かれるんだけど、それがもうほとんど痴話ゲンカの領域で、最高に楽しかったです。たとえばゆかりが落涙しながら言うこの台詞(pp. 75-76)など、どんな愛の告白かと思いました。

傷の舐め合いみたいなのは絶対にイヤ!!
綾那も必ず追って来るって思うしか…
なのに…

――ようやく追いついてきて相手の眼も恐れなくなって
なのに
今は私の眼だけが見られなくなってるって――
どういうこと?

こう言われてたじろぐ綾那のヘタレっぷりといい、どう見ても腐れ縁の元恋人同士。ここで重くなりすぎないようちりばめられた工夫(ゆかりの意外な攻撃手段や、はやてと槙のボケ同士の通じ合いなど)もすばらしく、バカで切なくてかわいい和解の物語となってました。双方の渾身の打突が、もはや一種の会話と化しているところもよかった。

でも、バトル終了後がねー……

激情ほとばしる綾那VSゆかり戦に決着がつき、「綾那の嫁は結局誰だ問題」(と勝手に命名)もうまいこと片付くあたりまではいいんですが、その後が詰め込みすぎのような。この期に及んで団体戦導入だの、寮を分けるだの、生徒会役員選抜試合だのと立て続けに新要素がアナウンスされるので、はやてじゃなくても、

あたらしい用語をつぎからつぎ
おぼえるまえにわすれるよ!!

と言いたくなってしまいます。この後すぐ始まったらしい新章「はやて×ブレード2」(はやてクロスブレードニャーン)の下地づくりをしておきたかったのであろうということはわかるのですが、だからってこうまで急いで説明しまくらなくても。物語だと思って読んでいたら、突然「設定資料読み上げ大会」になってしまうというこの展開が、第1章完結の余韻を何割か削いでしまっていると思います。単純にこれまでの伏線を消化するにとどめて、新章「はやて×ブレード2」で心も新たに新要素を披露するってわけにはいかなかったんでしょうか。

まとめ

バトルはよかった。百合もここ数巻でいちばんよかった。でも終わり際がごちゃごちゃしていて、余韻もかたなし。なんでこんな構成にしちゃったんでしょう。大人の事情ってやつ?