石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

映画『The Truth About Jane』感想

Truth About Jane [VHS] [Import]

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ただの初恋ものではない

名作。見るべし。

『The Truth About Jane』は、米国で制作されたテレビ映画。10代のレズビアンの成長物語かと思ったら、違うの。本人も成長するんだけど、それ以上に、娘がレズビアンだと知った母親が成長するの。初恋を扱っていながら単なる初恋ものの枠を越え、カミングアウトにまつわる親子の痛みと成長を描いた傑作だと言えましょう。

俗説を否定する描き方

主人公は15歳の少女ジェーン。両親にとっては初めての子どもで、愛情と期待を一心に受けて育つ。ある日気になる女の子テイラーと恋に落ちたことから自分がレズビアンだと気づくが、やがてふたりの関係が周囲にバレ……というのが、お話の前半です。

ここまでで光っているのが、ジェーンはレズビアンに「なった」のではなくもともとそうだったという設定です。「人は何らかの原因がなければ異性愛者に成長するはず」という俗説を真っ向から否定する、気持ちのいい描き方でした。

ジェーンが周囲にバレても卑屈になったり異性愛者のふりをしようとしたりしないのもよかったな。弟に侮辱されてテーブルを飛び越えてつかみかかるシーンや、学校の男の子にバカにされて傷つきながらも毅然としているシーンには涙が出ました。

母の葛藤

この映画でひときわ光っているのは、母親役スタッカード・チャニングの熱演。「愛しすぎるほど愛してきた娘が同性愛者だと突然知らされた母親の悲しみと怒り」というラベルを貼って博物館に保存したいほどの熱演です。ちなみにこの母親にはゲイの友達もいて、頭では同性愛イコール悪と決め付けてはいなかったはずなのですが、それでも愛娘がレズビアンだという現実は受け入れられないんですね。ま、そんなもんよね。

ジェーンが同性愛者だと知った母親は、一歩間違うとホモフォビアなクソババアそのものな行動を取りまくるんだけど、あたしはどうしてもこの人を憎むことはできませんでした。だって、基本的にはすごくいい人なんだもん、このお母さん。ジェーンのことが大事で、心配で、そして深く深く愛しているんだもん。ただ、愛情と受容とは別物で、そこがカミングアウトされた側の苦しいところなのよね。

このあたりから、ストーリーは「ティーンエイジャーの初恋物語」から「家族愛の物語」へと静かにスライドしていきます。

ジェーンの苦しみと成長

頑張ってはいるけれど、ジェーンも実は苦しんでいます。実は、ジェーンってばなんとテイラーにあっさり振られちゃうのよ。初体験までしたし、 喧嘩もしたけどラブラブだったのに。ただのかわいい初恋ものだと思ってのほほんと見てると、このへんで肩すかしをくらうわけです。

「自分はゲイで、誰にも好かれない」

と思って絶望するジェーンを周囲のおとなの同性愛者たちが力づけるのですが、ちょっと出来すぎの感がある(現実には、こんなに都合よく助けてもらえるものではないし)とは言え、どちらもいいシーンでした。特に後者は、登場した瞬間から「あ、この人レズビアンだ」とわかるキャラクターなのが楽しいです。演じている女優さんは実は別のレズビアン映画で強烈なホモフォビア持ちの女の役をやってたりするのが、また面白かったりします。

ともかくこれでジェーンは少し成長し、自らのセクシュアリティーを受け入れられるようになります。さあ、次は母親だ。

親たちの苦しみと成長

PFLAGに参加するスタッカード・チャニング。こんなものを見られるとは、昔『グリース』の不良娘役を見たころには想像もしていませんでした。同時に、アメリカにはこんな団体があっていいなあ、とちょっとうらやましかったあたし。

けれども、PFLAGに参加したおかげですぐに偏見がとけてめでたしめでたし、という展開にはなりません。そこまでやったら、ご都合主義すぎるわよ。ここからは、じれったいほどじっくりと、この母親に内在するホモフォビアが描かれます。

ところで父親はというと、母親ほどではないけれどやっぱり偏見があって、レズビアンの娘をどう扱っていいかわからないフシがあるのね。それでもやっぱりジェーンを愛しているものだから、たとえ見当違いでも一生懸命ジェーンを喜ばせようとするのが可愛いです。詳しくは書きませんがフットボール場のシーンは笑えるわよ。

両親にむかってジェーンが

「ゲイなのに愛してくれてありがとう。でも、そんなに一生懸命にならなくていいのよ」

と言うところにはにやりとさせられました。そんなこんなでぎくしゃくしながらも、この家族は再びまとまって行きます。

最後に

オチは伏せておきます。しみじみとした、いいエンディングでした。

ひとことでいうと、「いち家族、ホモフォビアとかく戦えり」というのがこの作品の主旨だとあたしは受け取りました。カミングアウトストーリーとしても良作。主人公少女の初体験時の心のふるえや、口げんかの後の甘い仲直りなど、ほのぼのとしたかわいらしいシーンもたくさんあります。いろんな意味でお勧めの映画です。