石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

映画『ポエトリー、セックス』感想

ポエトリー、セックス [DVD]

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最低の出来

まっったく面白くなかったです。サスペンス映画としても、レズビアン映画としても最低。
見るだけ時間の無駄、というのが結論です。

この映画のあらすじは、こんな感じ。

「元警官の女探偵ジルは、官能的な文面の詩を残して失踪した女子大生ミッキーの捜査を依頼される。ミッキーに詩を教えていた教師ダイアナに心を奪われ、同性愛の関係にのめりこんでいくジルだが、そんな折、ミッキーが腐乱死体で発見される。誰がミッキーを殺したのか? そして詩の朗読ビデオに隠されていた真実とは?」

……こうやって書くと、一見まともなミステリに見えるでしょう。だけどね、実際に作品
を見てみると、ひどいんだこれが。

設定とキャストが合ってない

一番問題なのはキャスティング。主人公ジル(スージー・ポーター)と、お相手のダイアナ(ケリー・マクギリス)が両方そろって小汚げな年増なのは観客への嫌がらせか何かでしょうか。いや、何も「映画には若い美男美女だけを出せ」というつもりはないんです。設定とキャラが合ってないんですよ、ふたりとも。

まずジルだけど、28歳という年齢設定に観客全員が「嘘」と突っ込みたくなるほどの肌の汚さです。ボーイッシュを気取ったとおぼしきベリショーも、加齢で薄くなった貧弱な髪としか見えません。チビな体はハードボイルドを気取ったモノローグとまったく噛み合わないし、最初から最後まで同じ服しか着ていないのも、酸っぱい臭いがしそうでとってもイヤです。まさしく観客の感情移入を拒否するレヅキャラナンバーワンだと言えましょう。

そんなジルが魅かれた女ダイアナはというと、人間よりも馬か猿に近いと思われる老け顔に根性の悪そうな表情を浮かべ、加齢臭さえ漂ってきそうなたるみきった体をしています。こんな人のことを「どうしよう彼女はステキすぎる」 と形容するジルの感覚は、フケ専以外のあらゆる観客を置いてきぼりにすると思います。ダイアナの夫によるとダイアナは「女ドンファン」なのだそうですが、どう考えても設定に無理がありすぎです。コメディーだったのかこれは? (コメディーならなんぼかマシだったろう……)

セックスシーンもちょっとどうよ

ちなみにジルの方も重力に負けまくったたるんたるんの体型なので、この二人の絡みを見るのは一種の拷問でした。レズビアンであるあたしが見てさえ、やめてくれ見せないでくれと泣きが入りそうでした。それなのに、何か勘違いしてるとしか思えない「エロティックなワタシ達をご覧なさい」的お約束シーン(例:摩天楼が見える高層ビルの部屋で、よせばいいのに窓ガラスのどま ん前で激しく絡む、とか。誰も見たくねえよ! 隠せよ、んなもん!)が次から次へと出てくるのは本当にキツかった……。

この映画って全体的にカットのつなぎ方がダメダメだと思うんだけど、予想もしてないときに意味なく「中年ボディの女性ふたりが体をまさぐり合ってハアハアするの図」がどーんと出てくるのは下手なホラー映画より怖かったです。

ヘタレな詩、ひねりのないオチ

ちなみに話の鍵になる「詩」の方も最悪でした。卑語を適当に並べてギャーギャー叫んでるだ
けの代物で、「こんな言葉を平気で使っちゃうワタシってカッコイイ☆」と得意になってるヘタレ中学生のネット詩集みたい。そういったヘタレ詩が盛大に披露されるポエトリー・リーディングの会のシーンでは、辛酸なめ子のエッセイ『ポエトリー魔境』(『ほとばしる副作用』文藝春秋社に収録)を思い出して吹き出しそうになりました。本当にもう、あんなも ん見せられたら、笑うか怒るしかないよな。

一応このレビューを書く前に、「ひょっとしてこの映画の詩には、英語話者でないとわからない文学的魅力があるのかも」と思って英語サイトをいくつか回って調べたりはしたのよ。でも、ネイティブスピーカーの間ですら「イライラした」「残念な出来」「馬鹿馬鹿しい」って意見がざくざく見られるという始末。というわけで、この映画に文学的な香りを求めてはいけないと思います。原題の"The Monkey's Mask"というのは松尾芭蕉の句からとったのだそうですが、芭蕉も草葉の陰で泣いていることでしょう。

サスペンス物としては、話にひねりがなさすぎ。簡単に犯人の予測がついちゃうし、クライマックスもつまんないし、オチのカタルシスもないし。高校のミステリ同好会が低予算で作った自主制作映画ならともかく、プロが作って金とって公開するものだとはとても思えません。

まとめ

そんなわけで最低のレズビアン映画でございました。アカデミー賞に「フケ専向けレズビアンセックスシーン部門」があったら間違いなく受賞していたと思われる怪作ですので、マニアな方はどうぞ。あたしゃもう、生涯二度と見返すことはないと思います。