石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『@ホーム―姉妹たちの想い』(高木信孝、富士見書房)感想

@ホーム―姉妹たちの想い (角川コミックス ドラゴンJr. 108-1)

@ホーム―姉妹たちの想い (角川コミックス ドラゴンJr. 108-1)

メイドレストランを舞台とする萌え百合漫画。個人的にはあまり合いませんでした……。

「『お店にいる時はウェイトレスは姉妹、店長がパパでお客様もみんな家族』という設定で接客する」というメイドレストラン"Families"を舞台とする萌え系百合漫画。一風変わった設定に少し期待しながら読んだのですが、自分にはあまり合いませんでした。理由は、

  1. せっかくの「家族」という設定がまったく生かされていないこと
  2. 語尾の小文字(ぁぃぅぇぉ)多用が合わなかったこと
  3. キャラの性格づけがあいまいで、どのキャラも「なりきり遊び」をしているだけのようにしか見えないこと
  4. 結局「異性愛=ノーマル」という決め付けから一歩も脱していないこと

……といったところ。以下に詳しく述べてみます。

1. 「家族」という設定が生かされていない

店長がパパでウェイトレスは姉妹、という設定なのに、メインキャラのウェイトレスたち4人が勤める店の店長は1度たりとも漫画に登場しません。また、「お客様も家族」というわりに客がらみのエピソードもひとつもなく、客は単なる背景扱いです。来客時に「お帰りなさいませ」、お店を出るときは「行ってらっしゃいませ」と声かけをする理由として「お客様もみんなが家族」という話が持ち出されてはいるのですが、実質的にはこれはありふれたメイドカフェでの接客スタイルと何ら変わりませんし、むしろ家族相手にする挨拶としては違和感があると思うんですよ。明治時代の男尊女卑家庭で妻が夫にする挨拶ならともかく。

そんなわけで、この漫画における「家族」設定は完全に破綻しており、単にメイドカフェのウェイトレスたちに姉妹ごっこをさせる言い訳としてかろうじて機能しているだけと見ました。せっかく少し変わった趣向の百合漫画が読めるかと思ったのに、蓋を開けてみたら中身はありふれた「メイド萌え」と「姉妹百合萌え」だけだったというのは、ちょっと残念です。

2. 語尾の小文字(ぁぃぅぇぉ)多用が合わなかった

これは完全に個人的な嗜好なのですが、ここあのほとんどすべての語尾に小文字が乱舞しているのにどうしてもなじめませんでした。

例:

私たちがぁ 蝶よ花よとぉ 育んできたぁ 目に入れても痛くない 麗しのぉ さくらちゃんがぁ なんとぉ 恋をしている模様ですっ!

平気な人はまったく平気でしょうし、ダメな人にはとことんダメな喋り方だと思います。そして自分は後者でした。

3. キャラが「なりきり遊び」をしているようにしか見えない

4人の性格の違いが今ひとつわかりにくいと思います。一応、主人公さくらは優しいドジっ娘で、ここあはさくらにベタベタしたい人、はるかは同人作家、みことは洋服(コス服?)作りとドールが趣味……というような説明があるにはあるのですが、どれも台詞での説明が主体で、性格を表す行動そのものが今ひとつ少ないんですよ。

同じ4人姉妹ものでも、たとえばオルコットの『若草物語』なら、ジョーが髪を切るとか、エイミーが鼻を洗濯ばさみでつまむとか、ひとりひとりの具体的な行動によって性格が明確に描写されていたと思います。でも『@ホーム―姉妹たちの想い』では、かろうじてそれがなされているのはさくらぐらいのもので、あとは性格づけの曖昧なキャラたちが単に設定にしたがってフワフワと「姉妹メイドなりきり」をしているだけという印象を受けました。

4. 「異性愛=ノーマル」という決め付けから一歩も出ていない

さくらが異性愛者であることが何度も「ドノーマル」(車じゃあるまいし)と形容されているところにげんなりしました。これは結局、「女性キャラ同士でいちゃいちゃさせつつ、そのかたわらで一生懸命異性愛中心主義を喧伝する」というよくあるヘテロ向け百合漫画のパターンであり、異性愛者でない自分にとってはたいへんに興ざめでした。

まとめ

萌えはあっても物語性は薄く、キャラもあまり立っておらず、その上「異性愛こそ正常」という主義主張をも匂わせるお話だと思います。どちらかというと、「メイド服の可愛い女のコたちが姉妹ごっこでイチャイチャしていれば満足できる」というヘテロセクシュアルの百合好きさん(ヘテロセクシュアルの百合好きが全員そうだ、という意味ではありませんよ。念のため)向けの作品であって、萌えよりドラマを楽しみたいとかガチ恋愛が見たいとかいう方には不向きな漫画だと見ました。