石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『BLUE DROP-天使の僕ら(1)』(吉富昭仁、秋田書店)感想

Blue drop 1―天使の僕ら (チャンピオンREDコミックス)

Blue drop 1―天使の僕ら (チャンピオンREDコミックス)

性とセクシュアリティの揺らぎが面白い近未来SF。

『BLUE DROP―吉富昭仁作品集』(吉富昭仁、メディアワークス)と同じ世界観を用いて性的な揺らぎにさらに拍車をかけ、エロ度とアホ度をupさせたようなパワフルなお話でした。そもそも表紙のふたりからして実は男だというのがすごい。かと言って単なる女装BL話で終わるわけでもなく、さまざまなセクシュアリティの揺らぎがこれでもかとばかり出てくる(もちろん女性同士の性愛もいっぱい出てきます)あたりが非常に面白かったです。

ストーリーについて

アルメと呼ばれる女性のみの異星人に支配された近未来――。高校生のショータは、アルメによって女性に改造されて親友のケンゾーとのSEXを強要される。それも1週間以内に…! 少年少女の性のサバイバルが始まる!?

(吉富昭仁. (2007). 『BLUE DROP-天使の僕ら』. 秋田書店. 裏表紙より)

というわけで、のっけからセクシュアリティと性的アイデンティティのクライシスとともに始まるお話です。そしてこの漫画がすごいのは、ショータとケンゾーだけでなく、登場人物ほぼ全てに性にまつわる何らかの揺らぎがみられること。実際、レズビアンもいればゲイもいるし、異性愛もあればクロスドレッシングの要素もあるし、異星人ですら性や繁殖についての考え方は一枚板でないといった有様です。だからこそ、誰もショータとケンゾーを「自分は『まとも』であいつらは『おかしい』」として安全な立場から笑う(嗤う)ことはできない。そして、実は現実世界でだって多かれ少なかれ誰もが揺らいでいるわけですから、読者にだってそんなことはできない。そこがもっとも面白かったところです。

百合要素について

「BLUE DROP-天使の僕ら」前半はショータとケンゾーの関係を中心にお話が進みますが、後半からは女のコ同士の関係(性的な意味で)が続出します。さらに、巻末に収められている「特別編 天使の悪戯」は完全に女性同士のお話。こちらは、エロくてスリリングなシーンも含みながら、ほのぼのと愛情豊かな(ちょっぴり苦くて切ないですけど)オチに綺麗に収束していくところがとても良かったです。特に笠木先輩の最後の台詞、うまいなー。

まとめ

キャラクタたちもいろいろと揺らいでますが、読んでいるこちらも思わず「性別やジェンダーって何?」「愛って何?」などと思考の枠組みを根底から揺さぶられてしまう、エロティックでコミカルなSF作品でした。女性同士の愛やエロもしっかり取り扱われていて、満足です。2巻も楽しみ。