石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

PCゲーム『ソルフェージュ』(工画堂スタジオ)レビュー

ソルフェージュ 初回限定版

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音ゲー/ADVとしては中途半端ながら、百合要素はgood

音ゲーとしてもADVとしても中途半端な面はありますが、序盤からいきなり女のコ同士のラブラブシークエンスを持ってくるという思い切った構成にまず拍手。いらん同性愛嫌悪が出てこないシナリオにも拍手。キスシーンもたくさんありますし、友情ゲーというより完全に百合ゲー寄りですね、これは。ちなみに音ゲーが苦手な人でも攻略しやすい親切設計になってます。

このへんが中途半端……。

1. 音ゲーとして中途半端

まず、フォルテールは奏者の魔力で弾く魔導楽器と言う設定なのに、外観も音もどう見てもただのキーボードでしかないというのはどうかと思います。これでは主人公がフォルテールにこだわる理由がわかりません。だってヤマハでもローランドでも買えば済む話じゃん?

音楽が単なる能天気なアイドル系J-POPで、ストーリーに合っていないのもマイナスです。同じ百合ゲーの『アルトネリコ2』(2007年秋発売・レビューはこれから書きます)のあの鳥肌が立つような音楽を経験した後に、この手の音楽で「心をひとつに」とか「弾き手の魔力が」とか言われてもなあ……。いや、アイドル歌謡曲そのものがいかんと言っているわけではないんですよ。『リトル・ウイッチ・レネット』のアイドルコンテストのあの楽しさを、あたしは忘れてはいません。問題はあくまで、曲調がストーリーに合っていないことなんです。

さらに、そもそもプレイできる曲目が少なすぎるのも残念。実際、攻略中にミュージックアクションとしてプレイできる曲は、全ルート合わせてもたったの5曲です。特にルートが確定した後は、最後までひたすら同じ曲ばかり何度も何度も何度も何度もやらされる羽目になり、しまいにはうんざりしてきます。本来なら、最後に近づくほど感動が高まらなきゃいけないと思うんですが。

2. ADVとしても中途半端

第一に、選択肢に面白みが少ないと思います。MAP画面による行き先選択のみで、行動や台詞は一切選べない上に、選択肢によって直後の展開が大きく変わるということが全然ないんです。つまり、選択は単なるルート分岐のための「作業」でしかなく、選ぶ楽しみやドキドキ感はほぼ皆無。

第二に、ボリュームの少なさも問題です。攻略キャラはたったの3人ですし、CGは差分なしで49枚。これは『カタハネ』『サフィズムの幻想 ~an epic~』のCG枚数の実に半分以下です。1997年に作られた『アトラク=ナクア』ですら54枚だということを考えると、随分少ないんじゃないでしょうか。安いゲームならともかく、定価9450円のDVD-ROMゲームなんですよこれ……。

それから、既読スキップがついていないのも痛かった。読む量がけっこう多いだけに、これはかなり辛いものがありました。

でも、このへんはgood!

1. 斬新な構成

なんとプロローグからしていきなり超ラブラブ、キスシーンもしっかり出てきます。プロローグの文章自体の色っぽさもいいですね。非18禁の百合ゲーというと、面倒くさいフラグ立てに耐えて耐えてようやく最後にご褒美としてラブシーンにありつく、みたいな展開が多いと思うんですが、全然そうじゃないところに度肝を抜かれました。ていうか、もう、鼻血出るかと。

2. ガチ百合ルートあり

要するにすくねルートのことですが、「あこがれのお姉さま」という陳腐な枠組みを使いつつ、全然陳腐じゃない熱情をきっちり描いてるところが良かったです。ちなみにオチというかストーリー上の仕掛けはかなり早めに割れてしまうんですが、んなこたこの際どうでもいい。熱いプロローグを伏線として、女のコ同士の「この人が好き」という感情部分をしっかりと描き切ったシナリオに大拍手です。ちなみにガチなのばっかりだと引く方には、ちゃんと別キャラとの友情百合ルートも用意されているのでご安心を。

3. 同性愛嫌悪の香りがしない

高屋のばあさまですら、女同士だからダメだとか変だとかというロジックを一切使わないことに感動。さすがパルフェやレネットやトリスティアを生んだ工画堂スタジオだわー。

4. 絵が新鮮

椋本夏夜さんの絵の柔らかい色調や、ゲームというよりイラストや漫画に近いような表情の描き方がとても新鮮でした。

5. 親切設計

ディスクレス起動、豊富なセーブファイル、比較的容易なフラグ立て、ミュージックアクションパートが負担にならない(難易度が選べる上、AUTO PLAYやスキップを使えばまったくプレイせずに先に進めることも可能)システムなどがとてもありがたかったです。

まとめ

正直言って、音ゲーやADVとしての完成度はあまり高くないと思います。値段のわりにボリュームが少ないところも残念です。しかしその一方で、斬新な物語構成やキャラたちの愛の深さ、偏見のなさはとてもいい感じでした。また、誰でも比較的簡単にラブシーン(複数)にたどりつける親切設計もナイス。定価が9450円(初回限定版、税込み)とかなり高いので、もう少し実勢価格が落ち着いてきてから買うにはいいゲームであろう、というのがあたしの出した結論です。