石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『School Days(1)』(ちんじゃおろおす、G-WALK)感想

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ちんじゃおろおす

ジーウォーク 2006-11-04
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百合っぽい人はいるけれど、結局異性愛中心のエロ漫画

こんなに可愛らしい表紙ですが、中身は18禁エロ漫画です。この1巻ではひたすら主人公「なお」のヘテロ性が強調されまくっており、「正直、百合/レズビアン漫画としてはハズしたか」という印象でした。主人公の仲良しキャラ「藤堂さん」はかなーり百合の人っぽいのですが、それに対していちいちホモセクシュアル・パニックを起こすなおの姿が鬱陶しいし、藤堂さんの言動自体も今ひとつ中途半端なところが下げ。ただし男女エロはきっちり出てきますので、絵柄が好みに合っていてそちらが主目的な人には充分良い漫画と言えるかもしれません。

主人公のヘテロ性が強調されまくり

主人公なおは男女セックスに興味しんしんの女のコ。同級生の女子が男の先生としているところを覗き見して興奮したり、ことあるごとに男女エロ妄想にふけってハァハァしたりしています。「男の人のアレって大きくて痛そうだけど本当に気持ちいいのかなぁー」(p46)などと妄想しながら夢中で自慰に励んでいるあたりなんか、PCレズゲー『恋夏〜れんげ〜』 の皐月を思わせるちんこスキーっぷりですね。

そんななおと仲良くなる転校生の美少女「藤堂さん」は、前述のように同性愛者っぽい言動が多い人。ところが、それに対するなおの反応が、実に典型的なヘテロのホモセクシュアル・パニックなんですよ。例を挙げると、こんな感じ。

藤堂「それじゃあ教えてあげましょうか? 女の子同士だけど―…いいかしら?」(と、なおのおでこにキス)
なお「ぎゃあああっ?!」
藤堂「うふふジョーダンですよお」

藤堂「あらあら とってもかわいらしいわね 食べちゃいたいくらい〜」
なお「ぞくくっ」(とドン引き)

ちなみに「ぎゃあああっ?!」も「ぞくくっ」もギャグタッチの大きめの書き文字。さらに、「ぞくくっ」の方ではなおの顔をコミカルな顔面スダレ状態にして、ここが笑うポイントであることが強調されています。

なおのこれらの反応は、id:Ry0TAさんが「そのリアクションは、どこまで本気? - に し へ ゆ く 〜Orientation to Occident」で述べられたような、「『自分は同性愛者じゃない』と確認する」ための、「すごくステレオタイプ化された、大げさな、パフォーマティヴなリアクション」だと思います。わざわざ百合っぽいキャラクタと絡ませておいて、一生懸命「このキャラは同性愛者なんかじゃないんですっっ!」とアピールするマッチポンプ性がアホらしいったらありゃしません。主人公がちんこスキーな異性愛者であること自体はまだいいのですが(そういう需要も当然ありますもんね)、この陳腐なホモセクシュアル・パニックの描き方は正直いただけないと思いました。

藤堂さんの言動が中途半端

ここが一番残念なところでした。藤堂さんはやたらとなおをからかったり、なおの身体に触れてきたりする女性キャラです。第6話では、なんとなおの下着を下ろして局部まで触るという活躍も見せます。ですが、どうもオンナノコスキーとしては中途半端なんですよ、この人。

一言で言うと、なおに対する欲情や熱情がほとんど感じられないんですよこのキャラクタには。第1話の「なおと知り合う前から、なぜかなおの名前を知っていた」というエピソードから、実は彼女が前からなおのことがひそかに好きだったとか、なおがすっかり忘れている出会いのいきさつがあったとかいう展開を期待したのですが、そんな展開はまったくなし。おまけになおへの触り方も、よく見るとすごく淡泊なんですよね。たとえば、先述の「下着を下ろして局部まで触る」というシークエンスにしても、あくまでなおに口を割らせるためにしただけで、目的を達したら即あっさりやめてしまっています。つまり、せっかくの女女エロシークエンスなのに、そこで快感を追求する気は彼女には毛頭ないわけ。

というわけで、藤堂さんからはなおに対する強い好き感情や欲望はあまり感じられず、どちらかというと「女のコ同士でフワフワとライトに絡ませておくための便宜的な存在」という位置づけのキャラクタだなあと思いました。もう少し違う描き方はなかったんでしょうか。

まとめ

ほとんど男女エロ主体の1冊であり、心理面でも行為面でも女女関係にはあまり期待しない方が良いかと。ホモセクシュアル・パニックの扱いもひどいものだし、「男女セックスがやたらと出てきて、ちょっとフワフワした百合っぽいキャラも一応見られる漫画」ぐらいに思っておくのが吉だと思います。