
- 作者: みなづきふたご
- 出版社/メーカー: ワニブックス
- 発売日: 2005/02
- メディア: コミック
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百合というより「フェチとバイ(?)と、同性愛への偏見」が目立つ漫画
あらゆる制服をこよなく愛する女子高生「魔呼(まこ)」を主人公とするギャグ4コマ。魔呼にベタ惚れで百合大好きな「逗子(とうこ)」というキャラがいたりして、一見百合作品っぽくはあるんですよ。が、下記の理由から、あたしにはあまり合いませんでした。
- 魔呼はあくまで制服フェチであって、同性に興味なし
- 逗子の言動は、百合というより百歩譲ってバイセクシュアル
- 同性愛への偏見が剥き出しになっているコマがある
以下、説明。
1. 真呼はあくまで制服フェチであって、同性に興味なし
「全世界の制服美少女は私のモノに」と叫んでいたりして(p4)一見百合の人っぽい魔呼ですが、この人が好きなのはあくまで「制服」であって、別に「女のコそのもの」が好きなわけじゃないんですよね。要するにこれはフェティシズムであって、いわゆる百合や同性愛とは質を異にするものだと思います。
2. 逗子の言動は、百合というより百歩譲ってバイセクシュアル
魔呼を思うあまり興奮して鼻血を噴いたり、「すっごい百合の本」や「もはや百合とはいえない本」(p118)を読んでやっぱり鼻血を噴いたりと、これも一見百合の人っぽい逗子さん。しかし、この人の一部の言動はどう見ても「男女エロ好きな人」にしか見えないんですよ。具体的には、
- 顔面にゼリーを浴びて一見顔射状態になった相良(女性キャラ)を見て大興奮(p117)
- 運動会の玉ころがしで「私玉いじりうまいんだー」という相良に「…あんたって意外とやらしいのね」と鼻血噴射(p125)
なんてあたり。ちなみに後者は、手書き文字で「玉いじり玉いじり玉いじり玉いじり玉いじり玉いじり玉いじり」とくどいほど書き込まれているのが特徴的。でも、これらの文脈での顔射だの「玉いじり」だのって要するに男女エロであって、これに興奮できるのはヘテロセックスが好きな人だけでしょ。というわけで、あたしにはこのキャラは「ヘテロ男子目線の女子」か、百歩譲ってせいぜい「バイセクシュアルで、男女エロも大好きな女子」にしか見えませんでした。
3. 同性愛への偏見がむき出しになっているコマがある
要するにp150左側の一番下のコマなんですが、相良が昔女のコとつきあっていたと誤解した女性の台詞がひどいったらないんですよ。
ここで露呈されているのは、以下の古くっさい偏見です。何 あんたそっちの趣味が? 私は狙わないでネ
- 同性愛は「趣味」である
- 同性愛者は常に異性愛者を誘惑しようとしている
異性愛者が「趣味」として異性と付き合うわけではないのと同じで、同性愛だって「趣味」ではありません。おまけに「狙わないでネ」という台詞に至っては、なぜこうも無邪気に「自分は同性愛者から見て魅力的なはず」と自惚れられるのかわかりません。なお、こういった「狙わないでネ」系の偏見については「みやきち日記」のエントリ「大ノンケ帝国は謎がいっぱい」や「なぜ創作物の中のレズビアンやバイセクシュアル女性は色情狂として描かれがちなのか」などもご参照くださると話が早いかも。ともかく、いくらこういう偏見が巷に流布してるからって、それを無批判に漫画に描いて再生産されるのは迷惑きわまりないです。
まとめ
以上のようなわけで、百合というより「フェティシズム」と「ヘテロ男子目線の、またはバイセクシュアルの女性キャラ」と「同性愛への偏見」の3要素が目立つ作品だと思います。お好きな方はお好きなのでしょうが、あたしにはあまり合わなくて残念でした。