石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『クイーンズブレイド -Hide&Seek- (2)』(南崎いく、角川書店)感想

クイーンズブレイド -Hide&Seek- (2) (角川コミックス・エース 201-2)

クイーンズブレイド -Hide&Seek- (2) (角川コミックス・エース 201-2)

相変わらず偏見コテコテ

4年に一度、女王の座を賭けて開催される闘技会「クイーンズブレイド」を目指す女戦士たちのアクションファンタジー。キャラがほとんど女性ということもあり、「百合だ」という評判もそこそこある作品ですが、女性同性愛の扱いは相変わらず偏見チックです。作風そのものは明るくコミカルなものの、「淫乱レズビアンが相手の意思を無視して一方的にヘテロ女性の身体をむさぼる」系のパターンが多すぎて、うんざりしました。百合要素以外に注目して読んでいる人なら気にならないのかもしれませんが、あたしには合わなさすぎでした。

2極化されたステレオタイプ

女性同士の性交がほのめかされるわりに、双方同意のもとでの「幸せなセックス」「愛のあるセックス」は皆無なんですよねこの漫画。あるのは、「性欲過多なレズビアンが一方的にヘテロ女性を襲ってハァハァする」という、迷惑行為としての性関係(複数)のみ。冗談めかしてギャグっぽく処理されてはいますが、これって要するに、「女が好きな女=淫乱レイピスト」というクソ失礼なステレオタイプを再生産しているだけだと思います。そもそも1巻から通して、登場する♀♀関係が

  • 「プラトニック姉妹百合」型のステレオタイプ
  • 「レズビアン=性欲過多のセックスモンスター」型のステレオタイプ

しか存在しないっていうのはどういうことよ。「プラトニックか、セックスモンスターか」の2極しかないなんて、まるで女性を「神聖なる処女か、ヤリマン肉便器か」の2種類でしかとらえられない童貞男子(の一部)の脳内みたいです。童貞男子(の一部)の場合は女性恐怖からそのような極端な価値観に走るわけですが、『クイーンズブレイド -Hide&Seek- 』のそれも同性愛への恐怖、すなわちホモフォビアからこうなっているんだろうなと思います。

もちろん、別に百合だけを標榜している漫画ではない以上、「ユーミルのおもらしさえあれば俺は一生この漫画についていく」とか「ビキニアーマーハァハァ」「いやむしろエルフのノーパンハァハァ」など、いろいろな楽しみ方がある作品だとは思うんですよ。でも、いちレズビアンとしてこの作品を見た場合、やはりここまで♀♀関係への偏見が漂う作風は、批判せざるを得ません。3巻以降で少しはましになってくれるといいのですけれど。

まとめ

百合漫画というより、「女性同性愛に対する偏見の再生産装置」とでも呼んだ方がよさげな内容でした。明るくコミカルなお話の中に無邪気にホモフォビアが混ぜ込んであるだけに、余計に始末が悪い感じ。気にならない人は気にならないのでしょうが、あたしにはまったく合いませんでした。