石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『BUTTERFLY69』(夏猫、一迅社)感想

BUTTERFLY69 (IDコミックス 百合姫コミックス)

BUTTERFLY69 (IDコミックス 百合姫コミックス)

少女漫画チックな百合短編集

計6本のそれぞれ独立した短編が収録された百合作品集。基本的にハッピーエンディングなお話ばかりで、ホモフォビックな描写もゼロです。ただし、絵に固さが目立つところと、キャラたちの職業観などが良く言えば少女漫画風、悪く言えば中高生ドリームっぽいところは好き嫌いが分かれそう。ティーンエイジャーには訴求力があるのかもしれませんが、大人が読むにはちょっときつい面もあるかも。

絵について

スタイリッシュで個性的な絵柄ですが、表情が硬めな点と、コマ割りがやや煩雑(特に第1話)な点が少々残念でした。あと、このへんは好きずきかもですが、トーンを貼りすぎてかえって画面が平板になってしまっているような気が。

中高生ドリームっぽさについて

たぶん想定読者層を意識してのことだと思いますが、「ロックシンガー」「モデル」「デザイナー」「ヤクザの跡継ぎ」など、キャラたちの憧れる/実際に就く/就くことを迫られる職業がいかにもコドモが妄想しそうなものであるところが大きな特徴。さらに、キャラの価値観そのものも、たいそうティーンエイジャー風味です。たとえば、ロンドンで服飾店まで持ってる主人公がデザイナーの道をあきらめようとする場面で

わたしもう23だしさ もう日本に帰ろうと思って

と言い出したり(p. 43)とか。23って大卒ペーペー新人の年じゃねえか何が「もう」だよ! とオトナとしては思ってしまうんですが、読み手たる10代少女から見れば、23歳は十分トシなのでありましょう。

作品全体に通底するこうしたティーンっぽさは、言い方を変えればある種の少女漫画っぽさでもあり、そう言えばここまで徹底して少女漫画してみせた百合作品というのも珍しいなと思いました。たいへん思い切りのいい戦略であり、面白い試みだと思います。大人が読むにはちょっと合わない面もあるかもですが、「ターゲット層が違うのだ」と割り切りましょう。

ストーリーについて

軽く毒をきかせたお話もありますが、基本的にすべてハッピーエンドなラブストーリーです。妙なホモフォビアも出てきませんし、女性が好きな女性をはっきり「レズビアン」と呼んでいる(『そっちの人』とか『そのケがある人』とかじゃなくて!)ところがとても嬉しかったです。

まとめ

偏見のない話作りは好印象。ただし、絵にかなりクセがある上に、対象層も絞り込まれていそうなので、合う/合わないが分かれやすい1冊なのではと思います。個人的には、ここまできっぱりとティーン向けに割り振った作品が出てきたこと自体が非常に面白いと感じました。昨今、百合の裾野はずいぶんと広がってきていると思いますが、今後はさらにジャンルの多様化と分化が進んで行くのかもしれませんね。