石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

「ダ・ヴィンチ 2009年09月号」第2特集「貴女がいれば、世界は美しい はじめてのGL ガールズ・ラブ」感想

ダ・ヴィンチ 2009年 09月号 [雑誌]

ダ・ヴィンチ 2009年 09月号 [雑誌]

面白かったです。

面白かったです。わりかしマイルドなトーンの特集ではありますが、ホモフォビアや妙な固定観念は見受けられないいし、GL(または百合)漫画/小説のガイドブックとしても一迅社の『百合作品ファイル』より役に立つ内容だと思います。特にいいなと思ったのは、

  • 宮木あや子さんの書き下ろし小説「蜜の味のキャンディ」
  • かずまこをさんと森島明子さんによる対談
  • 志村貴子さんのインタビュー

の3つでした。

短編小説「蜜の味のキャンディ」について

GL特集のトップを飾る短編です。この特集自体はわりとソフトで、セックス方面にまで踏み込んだ話はほぼ出てこない(とは言え、森奈津子さんのエロティックコメディが好意的に紹介されていたりもして、性に対する変な抑圧等はないんですけど)のですが、そんな中で

合宿所の外はとても静かで、とろりとした琥珀色の闇の中には少女たちのひそやかな話し声と、口の中で転がすキャンディの甘い匂いだけが漂う。

と(p. 196)、文体そのものがすでに美しいエロスをたたえているこの作品がひときわ輝いてました。ちなみにこの小説、セックスこそ登場しませんがオナニーは普通に出てきます。可愛くて美しくて、ちょっとだけいやらしいお話です。女子校(たぶん)の先輩後輩ものなのに、ありがちなパターンをするするとすり抜けていく楽しさがあって、よかった。ダ・ヴィンチも、『セレモニー黒真珠』レビュー)に続いて、こういうのをどんどん連載してくれればいいのに。

森島明子「二の腕を固く描け! とか言われたら死んでしまう(笑)」

かずまこをさんと森島明子さんの対談は、おふたりの作風の違いを反映していて面白かったです。たとえば、このへんとか。

森島 私自身が男性より女性が好きなせいか、描くものも「リアル寄り」とよく言われるのですが、意外とみなさん大丈夫なようで。女性は、自分が女性とつきあわなくても友情以上恋愛未満からリアルまで広くGLに共感できるのがおもしろい。

かずま あこがれと独占欲みたいなものが友達への気持ちにもある。私はずっとあこがれの先輩がいて、目をかけてほしいから部活をがんばったりしていました。今も、その気持ちの延長線上で物語を描くようにしています。ありえたかもしれない話、として。

あたしはどちらの作家さんの作品も好きなのですが、すごく納得がいく感じでした。この対談は他にもうなずけるところや楽しいところ(例:『群像劇の中にソフトな百合キャラを出すのが定番になってきてませんか?(森島)』とか、『二の腕を固く描け! とか言われたら死んでしまう(笑)(森島)』とか、『BLでは男の子はあまりかわいく描きすぎないようにしていたんですけど、GLだったら女の子をいくらでもかわいく描けるっていうのもうれしかったです(かずま)』とか)がいっぱいあり、さらにGL作品の情報も豊富で、ホクホクしながら読みました。

志村貴子「女の子同士って描いてて楽しいな、“女の子のこと”をすごい素直に描けるなって」

志村貴子さんへのインタビューは、『青い花』を描き始めたきっかけについてのお話が面白かったです。まず、思春期男子の内面を濃厚に描いた『敷居の住人』の話になり、そこから以下のように続きます。

「それを描くのに飽きた、という気持ちもあったと思いますね(笑)。女の子同士の話は読み切りで2話描いたんですけど、私なりに手応えを感じたんです。女の子同士って描いてて楽しいな、“女の子のこと”をすごい素直に描けるなって」

その気持ちが再燃したきっかけは、『マンガ・エロティクス・エフ』の担当編集者と一緒に観た、韓国のホラー映画だった。

「女子校が舞台の話なんですけど、“盗撮してたんじゃないの!?”ってぐらい、女の子同士のじゃれ合いとかがナチュラルで、描写にところどころハッとするきらめきがあって。ホラーよりも、この2人をもっと見せてよって感じでした(笑)。そこでポロッと“次こういうの描きたいなあ”と言ったら、“それでいきましょう!”」って。

それで生まれたのが『青い花』なんだそうです。知りませんでした。
読み切りの女の子同士の話というのは、『どうにかなる日々(2)』の「scene 5」「scene 9」のことでしょうか。

また、設定についてのこんなお話にも驚いたり、納得したりでした。

自身の女子高時代の記憶を探りつつも、「コテコテの女子高モノ」を描きたかったという。
「これ楽しそう、これ素敵、っていう感覚を盛り込んでみました。舞台を鎌倉にしたのも、鎌倉がなんだか素敵って思ったからで深い意図はないんです。高校が2つ出てくるのも、ブレザーとかジャンパースカートも私、すごい好きなので“どっちも描きたい!”って迷った結果なんです」

なるほどー。鎌倉が舞台なのはともかく、高校が2つなのは何故なんだろうと思っていたので、一挙に謎が解けた思いです。

ブックガイドとしての「はじめてのGL」特集

これが意外によくできてるんですよ。一迅社の『百合作品ファイル』は、百合/GL好きなら既に知っているような作品の羅列に終始していましたが、こちらはちょっと古めの漫画から一般文芸書まで幅広い作品が紹介されており、さすが本とコミックの専門誌だと思わせる内容になっています。レベッカ・ブラウンとか、あの岸本佐知子さんの訳による『変愛小説集』まで載ってるんですよ。紹介されている冊数そのものはトータル40〜50冊ぐらいと、決して多くはないのですが、内容の濃さや読みごたえでは完全に勝っていると思います。

まとめ

わずか8ページと小規模ながらも、面白い特集でした。同じダ・ヴィンチでも2007年11月号のBL特集は正直はしゃぎ過ぎてる感があってついていけなかったんですが(『ほもマンガ読むわよ〜!!』とか、もうね……)、こちらは楽しく読めました。