石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

映画『Go!Go!チアーズ』感想

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同性愛への偏見のグロテスクさを笑い飛ばすコメディ。恋愛部分もキュート

自覚のないレズビアンのチアリーダー・メーガン(ナターシャ・リオン)が、同性愛を「治す」という触れ込みのリハビリ施設に放り込まれ、すったもんだの日々を送るというコメディ。同性愛への偏見を徹底的に茶化して笑い飛ばしてみせる傑作だと思います。続々と出てくるステレオタイプの数々が「あるある」って感じで、いちいち面白かったです。メーガンとグレアム(クレア・デュバル)の初々しい恋模様も楽しいし、何よりクレア・デュバルの演技が全体的に非常によかった。ただし日本語字幕は偏見コテコテで最低なので、そこだけ要注意。

ステレオタイプが面白すぎる

メーガンが周囲からレズビアンだと判断された理由からして超ステレオティピカル(両親にトウフを勧めた→ベジタリアンはレズビアン!! とか)で面白いのですが、圧倒的なのはリハビリ施設「真実の道」の内部描写ですね。性別役割分業と異性愛中心主義の佃煮みたいなところなんですよ、ここ。

「真実の道」のポリシーを簡単に言うと、

  • 男女の役割を間違えているから同性愛者になる
  • 間違いを正せば異性愛者になれる
  • ゆえに男は男らしく、女は女らしくすれば同性愛が「治る」

というもの。この大間違いな発想のもと、収容者は女性はピンクの、男性はブルーの制服を着せられてジェンダー・ロールの特訓をさせられるんですよ。つまり、レズビアンが掃除やオムツ換えの練習をさせられる一方、ゲイ男性はフットボールだの自動車整備だのをやらされるわけです。さらにグループ・セラピーで「自分が同性愛者になった理由」をこじつけさせられたり、同性に欲望を感じたら電気ショックで嫌忌療法(嫌悪療法)をさせられたりと、笑えない「治療」も連発。これって実際のEx-gay(同性愛を治すという触れ込みの『矯正』施設)でも行われていそうよね。

ここですごく面白いのは、こうしたどぎつい偏見の見せ方。マジじゃなくてギャグですよ、この映画はこういうことに反対ですよという姿勢がすごくわかりやすいんです。「真実の道」の所長・メラニーをどピンクの衣装に身を包んだエキセントリックな人に設定してみせているのもその一環ですし、マゾヒストのレズビアンが「電気ショックの痛みが癖になる」と喜んでいたり、「治療」のさなかにゲイ男子同士がこっそり手をつなぎ合っているカットがあったりするところなんかにもニヤニヤさせられました。後述しますがクレア・デュバルの表情の演技もすばらしかった。同性愛者に投げかけられる偏見をいっそ露悪的なまでにカリカチュアライズしつつ、「こんなの全部間違ってる」としたたかに笑い飛ばす快作だと思います。

クレア・デュバル最高

この映画におけるクレア・デュバルの役割は「偏見の相対化」です。つまり、メラニーがふりかざす価値観に巻き込まれず、異を唱えてみせること。これをちょっとした表情だけで完璧にこなしてしまうところが実に心憎く、見とれました。

また、「不機嫌でぶっさいくなダイクとしてのグレアム」と、「メーガンの初恋相手としてのすごく可愛いグレアム」との演じ分けもみとごでした。撮り方もうまいんでしょうが、とにかく顔と体の表情が絶妙。前者については「いるいる、ああいうレズビアン」って感じでしたし、後者は素直に「可愛い!」と思いましたよあたしは。

ラブストーリーとしても良作

メーガンとグレアムの距離が縮まっていくあたりがとてもキュート。とまどいながらのキスもステキでした。セックスもヘテロ男性向けのポルノとはまるっきり違う撮り方で、そっと指舐めたりしてていい感じなんですよ。音楽もやさしくてきれい。笑い合うふたりの表情もよかった。ギャグとは言え、かなりえげつない偏見や、しんどい部分(同性愛者に内面化されたホモフォビアなど)も出てくる作品だけに、ここで思いっきりレズビアニズムが肯定されていることにほっとしたりしました。

ただし字幕は最悪

せっかく同性愛への偏見を笑い飛ばしてくれる映画なのに、日本語字幕はせっせと偏見を再生産していて不愉快でした。「lesbian(レズビアン)」は当然のごとく「レズ」と短縮されているし、「straight(異性愛者)」を「ノーマル(正常)」と訳すというのもどうかと思います。異性愛者=正常って、それ、メラニーの価値観じゃない!! 脚本と無関係な部分で、そんなもんをわざわざ強調してどうすんの。

まとめ

性のありようをめぐるステレオタイプを思いっきり皮肉る、楽しいコメディでした。メインカップルのみずみずしい恋もよかった。日本語字幕だけは下げですが、映画自体は非常におすすめです。