石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

『タンデムLOVER』(カサハラテツロー、芳文社)感想

タンデムLOVER (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)

タンデムLOVER (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)

ロボと百合との理想のコラボ

戦闘用タンデマイン(2人乗りロボット)のパイロット養成学校を舞台とする学園百合物語。1話ごとに主役カップルが交代していくスタイルの連作集で、とんでもなく面白かったです。無骨なメカと少女たちのみずみずしい感情とのとりあわせがなんとも楽しく、ワクワクニヤニヤしながら読みました。女子校百合という一見開拓され尽くしたような分野でも、アイディア次第でまだこんなにも鮮烈な世界が描けるのだという事実に感動。本編のみならず、胸の奥がチリッと痛む描き下ろし番外編「サベラ×ルミ」もまたすばらしかったです。

タンデマイン最高

百合話にあえて「タンデマイン」というメカを持ってくるというアイディアだけでまず大絶賛したいです。パイロット2人の心が噛み合わなければ自在に操縦できないという点で百合マインドがおおいに刺激されますし、実際その点に着目した話づくりも非常によかったと思います。少女たちのすれ違いも気持ちの通い合いも、犬も食わない痴話ゲンカも、すべてこのゴツくてどこかあたたかいマシンを通じて十二分に表現され切っていると感じました。メカ好き兼百合好きとしては、まさに痒いところに手が届きまくる感じでした。

実習機からジュニア機、農耕用機までさまざまなタンデマインのデザインが堪能できるのも嬉しいところ。迫力とスピード感に満ちたメカアクションからは、このロボットが決してお話の添え物ではなく、大切な主役でもあることが伝わってきます。また、操縦時のライディングポジションが、基本的に下の乗り手の頭が上の乗り手の脚の間に来るようになっているという設定も面白かったです。少女たちの間に漂うかすかなエロスを表現する手段として、これはうまい手ですね。

少女たちも最高

過不足のない台詞と繊細な表情が、少女たちの心情をこまやかに描き出しています。たとえばそれは、第1話クライマックスのコダとシマが声を揃えて叫ぶことば。あるいは、第3話のカトの水中での表情と、水面に戻ったアイラの顔つき。どれもけなげで可愛くて、なのにどこか百合な官能の香りもして、何度読み返しても飽きません。上記のほかにも、ギャグ話からちょっと切ないバディものまで名場面が目白押しなのですが、それは読んでのお楽しみということで。

描き下ろし番外編「サベラ×ルミ」について

養成学校の女教師と生徒の百合ストーリーです。この学校のタンデマインが「戦闘用」だということを思い出させてくれる、チクリと心痛む短編。このほろ苦さと甘酸っぱさのコントラストは、まるでフルーツジャムを中に仕込んだビターなチョコレートケーキのよう。ラストの余韻と美しさもいいですね。あとサベラ先生がかっこよすぎて惚れました。

まとめ

ロボット漫画にして百合漫画という新境地を大胆に、かつ繊細に切り開いてみせた傑作。躍動するタンデマインの姿に血湧き肉躍らせるもよし、少女たちの心のやりとりにキュンキュンするもよし。おすすめです!