- 作者: 斉木久美子,宮木あや子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/11/10
- メディア: コミック
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- 作者: 斉木久美子,宮木あや子
- 出版社/メーカー: 小学館
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官能純愛絵巻、堂々の完結
遊女たちのかなわぬ恋を哀切をこめて綴る小説『花宵道中』のコミック版。5巻にてついに完結です。いやあ、よかった! 連載開始前、掲載誌が『女性セブン』ってことで、レディコミみたいになったらどうしようとか、百合部分がカットされたらどうしようと案じていたのが嘘のようです。終わってみれば、あの原作の美しさはそのままに、漫画ならではのメリハリとわかりやすさで押してくる斉木版「花宵」にすっかり魅了された自分がいました。女性キャラたちの共感と連帯も、男性キャラたちの男前っぷりも、そしてお待ちかね「雪紐観音」(5巻収録)の百合描写もすばらしかったです。思い切って原作と違う切り口にした結末も、納得の一言でした。
「雪紐観音」、よかったです
うちのレビューを読みに来てくださっている方々がもっとも気になるのは、たぶんこのお話でしょう。というわけで、まずは百合ストーリー「雪紐観音」の感想から。
の一言(5巻p. 210)に始まる三津と緑のベッドシーンが、本当によくできていました。上品で、なおかつ官能的で、絵としても美しくて。少し台詞が改変されているのですが、それが三津が緑の道中について言ったことと結びついて、お話のテーマがくっきり浮かび上がるようになっています。切なさも極上品だし、百合がお話の中で浮くどころか、物語全体の骨子とかっちり噛み合ってエンディングにつながっていくところがとてもよかったです。ねえ 緑 何がしてほしいのかいってごらん?
その他いろいろ
- 男性陣の描き分けがよかったです。東雲が既に男前なのに、「すんげえ男前」の三弥吉の描写はどうするのだろうと思っていたらこれがほんとに凄くて見とれました。何、あの色気。ちゃらんぽらんに見えて実は結構クワセモノな竜二郎も、いい味出してましたね。
- 桂山姐さんの啖呵の場面(4巻p. 199〜)が痛快でした。女たちの連帯と共感がくっきりと描き出される名場面だと思います。「花宵」がもし映画化されるなら、ぜひ大画面で見てみたい場面のひとつです。
- 4〜5巻はこれまでのキャラクタの重なり具合が一気に見えてくる部分なので、群像劇としても手ごたえ十分。ついつい何度も読み返して「ここのあの人が、ここでこんなことに……」とじーんとしてしまいました。
まとめ
最後の最後まで原作世界を裏切らない切なさ美しさだし、漫画オリジナルの演出も心憎いしで、実に納得のいく斉木版『花宵道中』でした。百合部分にもたいへん満足。百合目当ての方も、5巻だけと言わず全部読んでください、ぜひ。