- 作者: 志村貴子
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2011/05/12
- メディア: コミック
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描き下ろし「若草物語」がみごと
巻末の描き下ろし短編「若草物語」(今回は2話収録)が息を呑むほど鮮やか。本編はゆっくりめの展開ですが、女の子同士の欲望から目をそらさない話運びがよかったです。
「若草物語」について
6巻では「可南子先生」と「前田さんと中島さん」の2作品が収録されています。どちらもほほえましさ・かわいらしさの中にも毒がピリリと効いていて、ラストのモノローグが刺さる刺さる。キャラの表情もいいんですよ、特に可南子さんと前田さんの困り笑顔(前者はp. 175、後者はp. 180)とか。正直「こんな高水準の短編ばっかりぎっちり詰まった単行本だったら失禁する」と思うほどみごとなできばえなのですが、さいわいどちらもわずか4ページという短さなので、失禁しないで済みました。心臓はわしづかみにされたけどね!
本編について
想定の範囲内ではありますが、ふみちゃんとあーちゃんの恋の展開はかなりゆっくりめ。連載時にリアルタイムで追っていた方はさぞやきもきされたことと思います。あたしとしては、スローな進展でありつつ「エッチないみもふくまれるすきなんだもん」(p. 163)という部分がじっくりと掘り下げられていくところを高く評価したいです。「性欲は汚いもの」とか「セックスしたら唾棄すべき『レズ』、しなければピュアな『百合』」とかいう抑圧的な(悪く言えば『子供っぽい』)価値観がまったくないんですよね、この作品。ほんっっとに地に足がついていて、ときどきつらくて、でもかわいくてちょっとエロくて、いいっすよ。
まとめ
今回も安定のおもしろさだなあ。メインカップルの進展の遅さにじりじりしなかったと言えば嘘になりますが、巻末の「若草物語」がよすぎて「終わりよければすべてよし」な気分になってしまいました。それに本編の方だって、女の子から女の子への性的欲望がごくていねいに追われていて、決して悪くないんですよ。しばらく漫画レビューを休んでいたため3年近く積ん読になっていた本作ですが、久々に読んでもやっぱりいいわ、『青い花』。