石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

「寛容」日本の化けの皮、はがれる。渋谷で反同性婚チラシやデモ、自民幹事長も同性婚に懸念。2丁目ではゲイバー取り締まり強化も

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渋谷区・世田谷区が相次いで発表した同性パートナーシップ施策に関して、「これをきっかけに、「自称『寛容』」な日本の本当の姿が見えてくるんじゃないか」てなことを書いたのが約3週間前。どうやら本当に「寛容」ジャパンの化けの皮がはがれてきたみたい。

詳細は以下。

起こっていることを時系列でざっとまとめると、こんな感じでしょうか。

  • 2015年3月2日:渋谷区議会に同性パートナーシップ条例案が提出される
  • 2015年3月2日:渋谷区内で「『普通の人々』を脅かす同性婚社会」なるチラシがポスティングされる
    • チラシの問い合わせ先電話番号は統一教会の関連団体のもの
  • 2015年3月5日:2丁目のゲイバーが「無許可で男性客に同席しながら酒を提供したりカラオケをデュエットしたりした」として摘発される
    • 警察庁は「取り締まりを強化する」としている
  • 2015年3月10日:渋谷で「頑張れ日本!全国行動委員会」なる組織が反同性愛デモを主催
    • 同組織のトップは、元航空幕僚長・田母神俊雄氏の選挙活動をバックアップしていた水島聡氏
    • デモ(および現場でまかれたビラ)の主張抜粋
      • 「普通の愛情は男女から発生する」
      • 「少数派を多数派と同じ扱いをすることが平等ですか」
      • 「主婦の立場から見て不安」
      • (同性パートナーシップ条例は)「次の世代を壊しかねません」
      • (同性パートナーシップ条例は)「必要以上の優遇措置」
      • 「私にも同性愛者の友達がいる」
      • 「あの名曲、”男が女を愛する時”、条例が通ったら歌えなくなるんですよ、どうしたらいいんですか?」
      • 「私も喫煙者ですが、ちゃんと喫煙所で吸っている」(※『同性愛者は隔離された場所で生活しろ』の意らしい)」
  • 2015年3月10日:谷垣幹事長が同性パートナーシップ証明書に懸念を示す

こうしてまとめてみると、「日本は衆道があったから/宗教的圧力やソドミー法がないから、同性愛に『寛容』」などというのがいかにうさんくさい説であるのか、よくわかりますね。

実際、上記の流れ、あまりにもオリジナリティーがなさすぎて*1笑っちゃうほど。「普通の愛情は男女から」だの「必要以上の優遇措置」だの、50年ぐらい前から世界中の宗教団体や保守派がゲイ差別を正当化するために持ち出し続けている言い訳と何ひとつ変わりません。女性がかかわる団体名で「子供達の未来」をダシにホモフォビアを扇動するというのは、米アンチゲイ団体「ワン・ミリオン・マムズ」("One Million Moms")とまったく同じ手口。警視庁のゲイバー取り締まり強化に至っては、「バンコクテキサス州のバー・レイドかよ」と思ってしまいました。てなわけで日本が寛容なんて大嘘、実態は「知識や意識が半世紀前からアップデートされていない、ありふれた同性愛嫌いの巣窟」だよん。

ただ、それでも今の日本がまだラッキーだと思うのは、こうした差別的なデモやビラに対したちどころにカウンター抗議が起こること、そして、たとえ現地に行けなくても即座に声を挙げられるインターネットという媒体(特にSNS!)があること。さらに、同性愛者や両性愛者でなくてもこうした差別・憎悪の扇動に怒り、批判してくれる方がいっぱいいること。

何も知らなかったら、アンチゲイ派の主張にただ流されて悪気なく「そうか」と思っちゃう人もいると思うんですよ。でも、そこでこれらの主張のどこがおかしいかを説明してくれる人がいたら、立ち止まれるかもしれない。希望をかけるなら、そこだと思います。この程度のバックラッシュはどこでだって起こってるんだし、今めげてる場合じゃない。

何より、本当に次世代のことを考えるなら、ここで大人が断固としてホモフォビアにNOを言わなきゃいけないと思うんです。確率から言って、渋谷の街で憎悪を扇動している大人たちの子供のうち、20人にひとりは性的少数者なんですから。そして「次世代」というのは、「ゲイ嫌いの方々が妄想するところの、『同性愛者を異性婚に追い込めば産まれるかもしれない非実在ベイビー』」なんかじゃなく、今この現実を生きている子供たち・若者たちなんですからねっ。あたしゃ黙らないし、あきらめないし、何がおかしいのか指摘し続けるよちくしょう。

*1:「パートナーシップ条例が通ったら男女の歌が歌えなくなる」説には正直あっけにとられましたが、トンチキ具合では米国のキリスト教原理主義者による「ゲイセックスをすると尻の穴から悪魔が出てくる」説とどっこいだと思います。また、「同性愛者を(喫煙者を喫煙室に入れるように)隔離しろ」説についても、ウガンダで唱えられた「ビクトリア湖の島にゲイを置き去りにしろ」説と大差ないと思いました。