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石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

「トランプ支持のLGBT」の大半が白人ゲイ男性

CafePress 2016 President Election Donald Trump Trump Poster Sticker Sticker by CafePress [並行輸入品]

米大統領候補、ドナルド・トランプが2016年10月30日、レインボーフラッグを手にLGBT擁護をアピールするパフォーマンスを披露。しかし実のところ、「トランプ支持のLGBT」を名乗る人というのは、そのほとんどが白人ゲイ男性なのだそうです。

詳細は以下。

Donald Trump’s Top “LGBT” Supporters Are Largely Gay White Men - BuzzFeed News

まず、コロラド州での選挙集会で「トランプを支持するLGBTs("LGBTs for TRUMP")」と大書されたレインボーフラッグを掲げてみせるトランプの写真をどうぞ。

ハフポスト日本版による、上記ツイートの和訳はこんなです。

トランプは昨夜、歴史を作った。MSM(男性同性愛者)は何事もなかったようなふりをしたがっている。彼は今まで両政党から指名された大統領候補者の中で、最もLGBTを擁護する候補者だ

しかしながらこのツイートの内容には矛盾があります。以下、これもハフポスト日本版より引用。

しかし、2016年7月18日の共和党全国大会で採択された政策綱領は、党の歴史上「最も反LGBT」だと批判された。またトランプ氏はクィア(性的マイノリティの人々)とは全く親しくない。彼は2015年6月26日に最高裁が同性婚を合憲とする判決を覆すための判事指名を「真剣に検討する」と言った。また彼は、同性婚は違憲だとして反対を表明しているし、トランスジェンダーの権利や保護については主張を翻した。 トランプ氏とともに選挙を戦っている共和党副大統領候補マイク・ペンス氏は、これまで長い間LGBTに厳しい態度をとってきたことを忘れてはいけない。彼は外国政府の同性愛を合法化する取り組みに反対し、"尋ねない、話さない"の廃止に反対し、インディアナ州知事としてLGBTの権利に反対する運動を率いてきている。

それからもうひとつ、上記ツイート主の名前にご注目を。このクリス・バロン(Chris Barron)氏というのは、「トランプ支持のLGBT(LGBT for Trump)」なるグループを運営していることで知られ、CNNなどメディアからの取材も受けている白人ゲイ男性です。しかしながら、本人がBuzzFeedに対して語ったところによれば、「トランプ支持のLGBT(LGBT for Trump)」は単なるFacebookグループであって、バロン氏はトランプのスタッフにLGBT当事者がいるかどうかも知らず、レズビアンのトランプ支持グループも特に知らず、トランスジェンダーに至っては「ジョージア州のプライド・イベントでトランプを支持するトランスジェンダーの人の写真を見たことがある(ただし写真の出所は不明)」という程度の認識なんだそうです。

ちなみに他にトランプ支持を表明している著名な性的マイノリティーには、先日人種差別ツイートでTwitter使用を禁止され、現在は「危険なオカマツアー」なる全米ツアーでトランスフォビアを扇動して回っているマイロ・ヤノポロス(Milo Yiannopoulos)氏や、決済サービス「PayPal」の共同創業者ピーター・シール(Peter Thiel)氏などが挙げられます。どちらも白人ゲイ男性。2016年7月に共和党大会で開かれた「LGBTパーティー」(主催者談)では“Twinks4Trump” という写真展示イベントがあったのですが、これもみごとなまでに白人ゲイ男性中心のイベントだったと報告されています。当日の様子は、以下をどうぞ。

公平を期すために言っておくと、LBTにトランス支持者がまったくいないというわけではなく、たとえばカーダシアン家のトランスジェンダー女性、ケイトリン・ジェナー(Caitlyn Jenner)などはトランプ支持を表明しています。しかしながら上記のツイートをしたCarlos Maza氏はBuzzFeedに対し、「会場でトランスジェンダーの人を見かけた記憶がない」、「女性はいたが、自分が会話した相手は異性愛者のようだった」と話しているとのこと。どう見ても、実質的には「LGBT」パーティーではなかったようですね、これ。

このようなグループやパーティーが「LGBT」を名乗ってしまうというのは、先日のニューヨーク・コミコン(Yew York Comic-Con)2016で、「ポップカルチャーにおけるLGBTの人々」に関する公開討論会のパネルが全員白人男性だった件と本質的に同じなのでは。さらに言うと、先月日本で開催されたLGBTセミナー「Work With Pride2016」で、スーツ姿のゲイ男性ばかりを並べた写真が「The Gay Elite」というロゴ付きで麗々しく飾られようとした件とも共通するものがあるのでは。つまり、集団内の相対的強者があたかもその集団を代表するかのようなふるまいで特権的にスポットを浴び、さらに劣位に置かれている者への差別を(たとえ無自覚にでも)強化するというお決まりのパターンね。

どこにでもある複合差別だけれど、こう立て続けに見せ続けられるといささか胸やけがしてきます。なんでもかんでも雑に「LGBTナントカカントカ」というネーミングをするのではなく、せめて以下のようなもっと正確な表記をしてくれればいいのに。

  • 「LとBとTのことについては知らないし興味もないシスジェンダー白人ゲイ男性 for Trump」
  • 「ポップカルチャーにおけるLGBTの人々について、白人男性の視点だけで語り合う公開討論会」
  • 「大手企業勤務のエリートで、顔出ししてカミングアウトしても困らないだけの特権を有しているゲイ男性の働き方を優先的に考えるセミナー」

そんなことはない、自分たちの試みはもっと多様だというのなら、口先だけでなく構成員の割合を本当に多様にすればいいだけの話。それをしない/できない/する必要に気づかないでいるうちは、「LGBTの」ムーブメントというより、「性的マジョリティの世界の権力勾配を無批判に持ち込んで、特権階級様の困難解消だけにキャッキャと取り組んでいる集まり」に過ぎないと思うんですよねえ。こういうの、ゲイ男性だけではなくレズビアンも非常にしばしばやらかすので(本で読んだのですが、『日本の』レズビアンのおかれた状況について論じ合うはずの場で、みごとなまでに『日本国籍を持っている日本人の』レズビアンのことばかりが論じられ、在日外国人のレズビアンの存在が無視されてしまったという実例があったそうです)、自分で言ってて非常に耳が痛いんですけど。た、他山の石、他山の石。