石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

小説「コンクパール」(宮木あや子、集英社「小説すばる」2008年11月号掲載)感想

小説すばる 2008年 11月号 [雑誌]

小説すばる 2008年 11月号 [雑誌]

『花宵道中』『雨の塔』などではかなくも美しい百合ワールドを展開してみせた宮木あや子さんの、本っっ気のレズエロ小説です。たまらんです。読んでて心拍数上がります。2箇所あるセックスシーンは言わずもがな、冒頭のたとえばこのあたりだって、身悶えするほどエロティックです。

コンクパールはとても高価な宝石です。
パールという単語を含むその名前から、真珠のように滑らかな淡い光沢を持つ球体を想像されるかもしれません。たしかに、貝の中で宝珠が育まれることは共通しています。一般的に知られている「真珠」という宝石は、アコヤ貝という二枚貝の中に育ち、この二枚貝をこじ開けて異物を挿入することによって養殖することが可能です。しかしコンクパールの場合、二枚貝ではなく巻貝の中で育つため、核となる異物を挿入することが難しく、養殖することができません。したがって、巻貝が気まぐれにその珠を作り出すのを待つしかなく、普通の一粒の真珠と比べると、コンクパールは驚くほどお値段がお高い。そして、真珠の清楚な輝きと比べると、コンクパールの輝きは、驚くほど卑猥です。

このこぼれるほどのエロティシズムがわからない人は、そのへんの安っぽいAVでも見てやがれと思います。ちなみに女性同士の絡みのシークエンスは計2回ほど出てくるのですが、小説すばるのページ数にして丸々3ページほどが官能描写に割かれており、その濃厚さと切なさと来たらめまいがするほど。百合エロ/レズビアンエロがお好きな方なら、満開の花の香りに酔っぱらったミツバチみたいな幸福な気分になれること間違いなし。ちなみに個人的に一番キタのは、

中指、中指、なかゆび。

のリフレインのところ。ひ、卑猥だよーっ。でも、すげえ好き。第一関節かー。(と、自分の指をしげしげ見てしまったわたくし)

ちなみに決してエロだけのお話なんかではなく、「生身の人間よりも、洋服や宝石に恋をする」という主人公の不思議(でも、とてもよくわかる)な感性がすごくよかったです。その感性がただのエキセントリックな性格づけとして使われているのではなく、ストーリー内で重要な役割を果たしているところがすばらしい。また、端正な文章で綴られていくお洋服愛というか無機質愛も面白かったし、

というか、恵比寿のシエルというのは、いったいどこの何ですか。
の場面に見られるようなどこかすっとぼけたユーモア(読めばわかる)も楽しかったです。というわけで、全般的にとても良かったので、レズエロ好きはみんなこれ読んで心拍数バクバク上げて幸せになるといいと思います。こういう小説がもっとたくさん世に出てくれるといいのになあ。