- 作者: 桂よしひろ
- 出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス
- 発売日: 2009/06/24
- メディア: コミック
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百合ストーリーとして花開く完結編
空間的・時間的に閉ざされた学校からの、美少女数人の脱出劇を描くライトSFの第2巻です。1巻では主人公「まなつ」のヘテロ性がやけに強調され、同性愛は「シュミ」「性癖」扱いされていたのですが、なんとこの2巻では急転直下、少女同士のラブストーリーとしてきっちり盛り上がりまくっています。♀♀カップル数は複数で、さらに女のコから女のコへの片想い等もあり、「ヘテヘテ話かと思ってたら突如として大輪の百合の花が咲き乱れた」という印象でした。こういうサプライズは嬉しいなあ。SFとしてはわりと淡泊な展開でしたが、お話のウエイトが恋愛方面にシフトしていることもあり、これはこれでありだと思います。相変わらずエロい絵柄もよかったです。
このへんが百合の花咲き乱れ
まなつと葵
結局まなつが同性からのアプローチに拒否反応を示していたのは「葵でなければ嫌だったから」でファイナルアンサーのようです。2巻では葵相手にドキドキのファーストキスから「好き」と自覚してのキスまで、まなつの恋心がたっぷりと描かれます。クライマックスのキスシーンもよかった!
華王院と新キャラ「シャーリー」
まなつと葵の関係の呼び水になっているのがこのカップル。華王院に堂々とキスしまくるシャーリーが、夜の音楽室でまなつと繰り広げるこの会話(pp. 97 - 98)がイチオシ。
これですよこれ。この「シンプル」さですよ。「趣味」でも「性癖」でも、ましてや「宇宙人を追い出すため」という名目のためでもなく、ただ単に「スキなモンはスキ」だからキスするというシャーリーのまっすぐさが、とても気持ち良かったです。1巻以来お話に微妙に絡まっていた(ように見えた)異性愛規範の気配がきれいに消し飛ぶ、ナイスな場面だと思いました。実際、まなつと葵の仲がぐっと進展したのは、この会話が大きなきっかけになっていると思います。そういう意味でも重要なキャラですね、シャーリーは。シャーリー(引用者注:華王院への好き感情について訊かれて)「だから 普通に“アイシテル”だが」
まなつ「でもでもだって女の子同士だよ 本やマンガじゃよく見るし この学校でも色々ウワサぐらいはあるけど…」
シャーリー「別に――ま スキなモンはスキだしな 華のことを考えるとこうキューンとたまらなくなるというか」
(引用者中略)
シャーリー「何気にしてんだか知らないけどサ もっとシンプルでいいと思うけどナ」
その他
カップル形成しないキャラ達も女性同士のエロスや片想いの面で重要な役割を担っており、どこまでも百合ん百合んでした。1巻を読んだ時点では、「りりぃだけにイロモノとしてのレズビアン役を振って、後はヘテロ同士のキャッキャウフフで終わるのかしら」とか思っていたんですが、その予想は完っ璧に間違ってました。やられたー。でも、こんな嬉しいサプライズなら、いつだって大歓迎です。
SFとしては淡泊
SFとしてはわりかし予定調和チックな展開だと思います。が、少ない言葉数でサスペンスを生み出していくところが非常に面白いし、最後の決戦の後に意外な方向からの驚きが仕込んであったりするところも楽しかったです。スリリングでかつ希望に満ちたオチもよかった。
絵柄は相変わらず官能的
全年齢向けのお話で、行為もキスが主体(キス以上もちょっとはありますが)だというのに、むっちりした唇とかフトモモとかお尻とかの描写がどこまでもエロいです。肉感的な美少女がツボな方なら、読まない手はありません。
まとめ
実にいい形で予想を裏切られた1冊であり、読んでいてすっごく楽しかったです。少女同士のラブストーリーとしても、サスペンスフルな学園SFものとしてもおすすめ。