石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『紅蓮紀(2)』(武若丸、一迅社)感想

紅蓮紀 2 (IDコミックス 百合姫コミックス)

紅蓮紀 2 (IDコミックス 百合姫コミックス)

壮大なのはわかるんだけど、びみょーに物足りない……

魔界の皇女「クレア」とボクっ娘「蘇芳(すおう)」の絆を描くファンタジック百合作品、第2巻。一部のキャラクタの秘密が明かされたりスプラッタな展開があったりと、お話が大きく動き出してはいるのですが、この微妙な物足りなさは何なんでしょう。おそらく、物語の展開そのものにも、また百合部分にも特に目新しさが感じられないというのがこの「物足りなさ」の原因だと思います。番外編である第5.5話の愛やハチャメチャ感はじゅうぶん面白かったので、「なぜこれを本編でやらない……?」と首をひねってしまいました。

物語についてあれこれ

絵柄には迫力があふれていますし、あの人の正体がわかるところなんかは胸に迫ってくるのですが、お話のはしばしにあまりにも既視感が漂っている気がします。あの人が実はアレだったことにせよ、蘇芳の突然の変化にせよ、魔界からの追手にせよ、どれも既にこれまでにいろんなオタ作品で使われつくしているパターンだと思うんですよ。つまり、センス・オブ・ワンダーがない。どこかにもう少し、この作品でなければ読めないようなひねりが欲しかったところです。

百合部分についてあれこれ

まず季鬼はとてもよかったです。うららのために無茶するところとかね。あと、蘇芳がクレオを「片手ひとつで止め」るところなんかも。

でも、肝心の蘇芳とクレオの関係が、相変わらず「戦闘中にクレオの魔力が流れ込むと蘇芳がオーガズムを感じてしまう」っていうところからあんまり進展していないところが食い足りません。いや、恋愛方面に発展しないこと自体は別にいいと思うんですよ。でも、その手のオーガズム場面でわざわざ

クレオのすごくて…
カラダの中いっぱい…
ココからあついの入ってきて…
もう…
ボクの中あふれちゃいそう…なの

なんていうあざとい台詞(pp. 78 - 79)を出してくるところにすんごく萎えるんですよ。まず、性的でないシークエンスで、女性同士のペアでの能力発現時に絶頂に達してしまうという設定自体、特に新しさはない(たとえば高千穂遥氏のダーティペア・シリーズで80年代に既に書かれています)と思います。そこへもってきて、全っっ然恋愛/性愛方面に進展しないストーリーの中で、木に竹を接いだようにしてエロ漫画系のありがち台詞を言わせるという無理やり感がなんとももう。どこかで見たような設定に、どこかで見たようなエロ台詞を強引にくっつけられたところで、読んでる側としては白けるばかりです。

番外編(第5.5話)は面白かったです

ギャグタッチの1編なのですが、こちらでは文脈無視のご都合主義的エロではなく、堂々の放尿強制プレイ(と書くと語弊があるかもですがマジでそんなです)が出てきたりしていて、その思い切りのよさに感動しました。コメディとしても面白かったし、クレオと蘇芳の愛も光っていて、楽しかったです。エロっぽい百合をやりたいのなら、本編でもこれぐらいやってしまえばよかったのに、と思いました。

まとめ

番外編は面白かったものの、肝心の本編が今ひとつだったのが残念。新味に欠ける展開といい、わざとらしいエロ台詞と言い、あたしにはあまり合いませんでした。3巻でもう少し化けてくれると嬉しいなと思います。