- 作者: 志瑞祐,絶叫
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2009/06/25
- メディア: 文庫
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オチもきっちり百合もたっぷりのスラップスティックコメディ
自然の守り手ドルイドの美少女「ホリン・シャレイリア」と、そんなシャレイリアに懸想する主人公「夏穂」の織りなすドタバタ百合コメディ、第3巻。オムニバス形式で計4本の短編が収録されており、とても面白かったです。2巻での「オチが弱い」という欠点は完全に克服され、今回はむしろ構成のみごとさに唸らされました。夏穂の暴走する妄想と欲望も相変わらず楽しかったし、マリみてパロディーをはじめとして、相変わらず充実したオタクネタの数々にも笑い転げてしまいました。ギャグも良し、百合も良しの爽快なコメディ作品だと思います。
構成のみごとさについて
これにはもう、大拍手を送りたいです。どこに転がって行くかわからないラグビーボールのようなハチャメチャコメディなのに、各話がきっちりオチているんですよ今回は。ひとつひとつが別個の話のように見えて、第4話ラストがしっかり第1話とつながっているという仕掛けもよかったです。パズルのピースがカチッとはまるような心地よさのある1冊でしたね。
夏穂の妄想と欲望について
夏穂の煮えたぎる欲望は今回も健在です。
「うん? シャレイリアの髪がいい匂いだなーって。肌触りも気持ちいいなー。こういう種類の抱き枕が欲しいよ。シャレ枕が通販で欲しいよ」
すりすりすりすり。
とか(p. 10)、
「美味しそうなのは可愛いあんただよ。シャレイリアにホイップクリームをトッピングして食べたいよ」
とか(p. 37)フツーに言ってますし、なんか手も出してますし、微(ではないこともしばしば)エロな妄想も健在だしで、相変わらずの飛ばしっぷりを見せてくれています。シャレ子さんも可愛いけど、あたしゃむしろアンタが可愛いわ夏穂。シャレイリアとの喧嘩で、絶望のあまり素っ頓狂な行動に走ってしまうあたりなんかもアホでよかったです。また、不意打ち的にシャレ子さんから好意を示されて真っ赤になったりしてるところも、きわめてキュートでした。
マリみてパロディーについて
今回もっとも笑ったのがこれ。第1話「お局様がみてる!?」の冒頭(p. 7)からして、こんななんですよ。
うぉう、うぉう、うぉーう!(ゴキゲンヨー)
うぉう、うぉう、うぉーう!(ゴキゲンヨー)
さわやかな朝の遠吠えが、澄みきった青空にこだまする。
裏山の森に棲まう動物たちが、今日も無垢な獣顔で薔薇のアーチをくぐり抜けていく。
汚れのない心身を包むのは、ふわふわの毛皮。尻尾の毛は乱さないように、たてがみは翻らせないように、ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。
ちなみにこの後「サイが乱れていてよ」とシャレ子さんに声をかけるのは、紅薔薇の局(ロサ・キネンシス・アン・ツボーネ)。ツボーネて。爆裂ギャグの中にもマリみてへの愛がひしひしと感じられる、よい短編だと思います。
豊富なオタクネタについて
1~2巻と同じく、これでもかとばかりアニメ・漫画・特撮・ゲーム・ラノベなどに由来するギャグが詰め込まれています。しかも、「知らなくても全然困らない、知っていればもっと楽しめる」という親切設計も相変わらず。ざっと見ただけでもイデオンとか北斗の拳とかウテナとかウルトラマンとかモンハンとかドラゴンボールとか狼と香辛料とか、それはそれは豊富なネタがさりげなく配置されており、ヲタなら腹筋が休むヒマがないことでしょう。ちなみにこの手のギャグで今回わたくしが一番ウケたのは、法香がとある植物に襲われながら絶叫(p. 36)する、
「きゃああああああっ、びおらんてえええええ!」
でございました。
その他
どこまでも不遇な須田(『らめええええ』に涙しました)やマイペース眼鏡の雪那(必殺技の解説がナイス)に加え、今回初登場のシャレイリア父もいい味出してます。いつもながら、くっきりはっきりしたキャラ立てが非常にうまい作者さんだなあと思いました。
まとめ
いやー今回も楽しかったー! 1~2巻に勝るとも劣らぬ痛快百合ギャグ作品だと思います。結末もきっちりオチているし、夏穂の「ラブラブダイナマイツ」っぷりも楽しいし、パロディも笑えるしで、充実の1冊でした。おすすめ。