石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『とある科学の超電磁砲(5)』(冬川基[画]/鎌池和馬[原作]、アスキー・メディアワークス)感想

とある科学の超電磁砲 05―『偽典・超電磁砲』付属特装版 とある魔術の禁書目録 (電撃コミックス)

とある科学の超電磁砲 05―『偽典・超電磁砲』付属特装版 とある魔術の禁書目録 (電撃コミックス)

戦闘につぐ戦闘の巻

人気ライトノベル『とある魔術の禁書目録』のスピンオフコミック第5巻。4巻で明らかになった計画を単身で潰そうとする御坂美琴の戦いがメインです。敵の面々がことごとく強いため、戦闘シーンは常に緊迫感満点。黒子・佐天・初春などが登場しないため、わかりやすい百合っぽさはほぼ皆無ですが、そんなことを気にしているヒマがないぐらいスリリングな1冊でした。一見ついえたかに見えて実はまだまだ続いているあの計画が、これからどう物語を動かしていくのか楽しみ。久々登場の上条が、今後どう美琴と関わっていくのかも気になるところです。特装版特典別冊付録『偽典・超電磁砲』もよかった!

バトルの迫力がすごいです

建物内を立体的に動き回ってのバトルがド迫力です。いつも通りのびやかで躍動感あふれる絵柄が、戦闘シーンをこれでもかとばかりに盛り上げています。心理面の凄味や、敵の皆さんのエグさもよかったです。圧倒的に不利な戦いへと美琴をかりたてる「怒り」の描写もすばらしかった。

百合っぽさは希薄ですが

戦闘に継ぐ戦闘の巻であるがゆえに、いつものような日常のベタベタイチャイチャ描写は皆無。というわけで「黒子のセクハラや佐天のスカートめくりがないと死ぬ」という百合ヲタさんには不向きな1冊です。ただ、フレンダが美琴の「地雷」を踏んでしまう場面(p. 116)に顕著な通り、今回のお話全体が4巻ラストのあの悲劇と強烈に結びついていることは確か。つまり、深読みするならば、これって強力無比な姉妹百合の1冊でもあるわけです。個人的にはこれだけでごはんが3杯いけます。

その他

  • キャラの立て方が実に基本に忠実で、読みやすかったです。口調の描き分けなど、「昭和か?」と思ってしまうほど王道な手法ですが、これがあるからこそ、新キャラが多くても混乱せずに読めるんですよね。
  • 久しぶりに登場した上条と美琴との関係が今後どうなっていくのかも楽しみです。このままヘテロ展開に傾いていくんでしょうか。それはそれで面白そうですが。

別冊付録について

特装版別冊付録『偽典・超電磁砲』には、これまでの未収録作品に加え、多数の描き手/書き手さんによるコミック・イラスト・小説などのトリビュート作品が収録されています。執筆陣は以下(50音順)。

  • いけださくら
  • 犬江しんすけ
  • えれっと
  • おにぎりくん
  • 木谷椎
  • 倉嶋丈康
  • 小梅けいと
  • たくみなむち
  • 成田良悟
  • 鳴子ハナハル
  • Nottsuo
  • はぎやまさかげ
  • 伏見つかさ
  • 冬川基
  • 方密
  • みしまひろじ
  • 溝口ケージ

何よりもまず、アニメ告知用コミックなど、冬川基氏による未収録作品がたくさん読めたのが嬉しかったです。鳴子ハナハル氏の躍動感あるカラーイラストや、犬江しんすけ氏の4コマもよかった。特装版を買ったのは正解でしたね。

まとめ

アクションも心情描写も迫力満点で、堪能しました。表層的な百合的いちゃいちゃをお求めの方には向かない内容ですが、個人的にはお話全体に4巻のあのエピソードが色濃く影を落としているだけで大満足。別冊付録も充実の内容で、よい買い物でした。