石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『楽園Le Paradis 第3号』(白泉社)感想

楽園 Le Paradis 第3号

楽園 Le Paradis 第3号

林家志弦サイコー!!

林家志弦さんの特撮系百合コメディ「思春期生命体ベガ」が最っ高です。バカで熱血で鼻血ブーで、かつしっかりラブくてキスもありと、美味しいところがぎっしりでした。ゲストと言わず連載化してくれればいいのになあ。その他の百合/レズビアン作品では、「思いの欠片」(竹宮ジン)、「コレクターズ」(西UKO)がいつもながら面白かったです。この3作品だけで、この本1冊買った甲斐があります。以下、上記各作品のもう少し詳しい感想など。

1. 「思春期生命体ベガ」(林家志弦)

地球を守る宇宙人「琴平ベガ子」にキスを迫られまくる調理部部長・鷲峰さん(♀)のお話。超マイペースなベガ子が、

(引用者注:部活中に顔面に生クリームをぶちまけた直後に)さ これで自然な感じになりますよ どうぞ味見を

と迫ったり(p. 153)、

私の唇という名の月面に 先輩の唇という名のアポロ11号を

と言い放ったり(p. 161)と、あの手この手でキスを求めまくる姿がまず楽しいです。キスが必要な理由が二段構えになっていて、控えめながらもしっかり熱いキスシーンにたどりつくところもよかった。キス直後の鷲峰さんのさりげない独白(p. 171)もキュンキュンきます。おバカなドタバタコメディとしてもじゅうぶん面白いのに、甘酸っぱい思春期恋愛ものとしても絶品だという、すばらしい作品でした。

冒頭でも書きましたが、連載化してくれないものですかね、これ。ベガ子の名前はこと座のベガから来てるんだと思うんですが、ならば鷲峰部長はわし座のアルタイルってことで、「実は部長も宇宙人だった!」みたいな展開にはならないのかしら。いや、単純に「ベガとアルタイル=織女と牽牛」ってことで、カップルだよという暗示なだけなのかもしれませんけど。

2. 「思いの欠片」(竹宮ジン)

シリーズ第3話。今回は、レズビアンの主人公「高岡」が、クラスメイトのゲイ男子「原田」と仲良くなるお話。対外的にはクロゼットなこのふたりの、屋上での会話がとてもよかったです。「誰にも言えないのが凄く悪いことしてるみたいに感じる」と呟く原田に対する高岡の言葉(pp. 193 - 197)には、本当に胸がすっとしました。他には、主人公が年上専であることがさりげなく明かされているところなんかも面白かったです。それでこれまで年上相手のエピソードばかりだったのか! と膝を打ちました。

3. 「コレクターズ」(西UKO)

服好きと本好きのレズビアンカップルが主人公の4コマ漫画。今回は第4話と第5話が収録されています。友人「直巳」の結婚話にすかさずそれぞれが

貴子「洋装? 和装? お色直し何回するの?」

忍「結婚したら志賀直巳じゃん 惜しいなー一字」

と突っ込む(p. 59)という性格の違いが相変わらず楽しかったです。あと、第4話も第5話も、オチの切なさがナイス。これまでもずっとそうでしたが、このシリーズ、単にバカップルをドタバタさせて笑いをとって終わりではないんですよね。そこがとても好き。

まとめ

今回も百合/レズビアン物の質が高く、楽しく読みました。第4号にも期待です。もしも「思春期生命体ベガ」を連載化してくれたら(描き下ろし単行本でも可)、白泉社を神と崇めたいと思います。

おまけ

第4号には木尾士目さんとあさりよしとおさんが登場するそうです。いつもながら本当に執筆陣が豪華ですね、このアンソロ。