- 作者: いけだたかし
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2010/10/23
- メディア: コミック
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ちょっと警戒するなあ、この展開。
女子高生ふたりのくっつきそうでくっつかない恋物語、第7巻。6巻のヒキをはぐらかしてサブキャラ主体の話に持って行くところはまだ予想の範疇でしたし、漫画としても面白く読めました。しかし、その後にくる唐突な生徒会選挙戦と中傷ビラ、そして「純夏に男がいるという噂を流そう」という展開などには、警戒心を抱かずにはいられません。この気配だと今にも「差別はあって当たり前、それに負けない恋ってスゴイ♥」路線に転びそうで、ハラハラするんですよ。何より、フォローなしでのああいう中傷シーンにはたいへん心が痛むので、この先読み続ける自信がなくなってきました。同じ巻の中に異性愛主義を相対化する視点のひとつもあればいいんですが、今回はそれがほとんど見受けられないところがきつかったです。絵はいつも通りよかったんですけどね。
当たり前じゃないことに迎合する主人公なんて。
あの蓮賀さんが異性愛主義に迎合しまくった「男がいるという噂を流す作戦」を持ち出すところにもがっかりだし、純夏が薄ら笑いでその尻馬に乗っているところにはもっとがっかり。
いや別に、彼女たちにLGBTの権利のための闘士になれとかそういうことを言ってるんじゃないんですよ。そんな荷の重いこと、やらんでもいい。戦略的にはヘテロのふりをしておいた方が楽だってことも、もちろんよくわかりますしね。でも、キャラたちに、特に主人公に、異性愛主義に対してほんのわずかでも疑問なり反発なりを呈する様子が見受けられないところが、あたしには怖かったんです。8巻でもこの「主人公、ウジウジしつつ半笑いで異性愛主義に迎合」路線が続くのなら、読み続けるのはかなりの苦行になってくるなと思いました。読むけどさ、それでも。
サブキャラ主体の部分について
風間汐の兄の話やコイとマユのあれこれなど、単純に漫画として面白かったです。風間の兄が主役の第35話「春の宵」は、大人の男女話として楽しく読みました。男女の体格差のとらえ方や夜の風景、間の取り方など、味わい深かったです。本筋の今後の展開への布石にもなっていそうなとこころも見逃せません。またコイとマユについては、pp. 64 - 66のコイの涙の場面がイチオシです。抑制のきいた、それでいて切ない名場面だと思います。
絵はよかったです
絵は相変わらずすばらしかったです。緩急自在なコマ割りのよさもさることながら、p 143の、
のコマで汐の姿にすっと紗がかかるという画面効果にも唸らされました。キャラ間の心理的距離の変化を一瞬で表す、うまい手だと思います。すみちゃんはまだ“普通の人”だもの
まとめ
絵はいつも通り極上。6巻のヒキを軽くはぐらかして描かれる大人のヘテロ話も、コイとマユの切ないエピソードも、どちらも楽しく読みました。ただ、肝心のメインカップルの恋路が、あたしには今ひとつでした。「差別は現実にあるんだからそれを書いて何が悪い」という批判が飛んできそうですが、ごめん、そういうことじゃないんだ。差別が描かれること自体は別にいいんだけど、そこでキャラクタが皆ホモフォビアを内面化し切っているように見えてしまうと、絶望すんのよ、いろいろと。伝わらなくてもいいんだけど、とにかくあたしはこの7巻を読んでとても悲しいと思ったんです。