- 作者: なもり
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2013/06/01
- メディア: コミック
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第64話ラストが鮮やか
第64話ラストの鮮やかな落とし方や、第67話の延々続く地口の応酬がおもしろかったです。これらの落語にも通じる笑いのテクニックに、『ゆるゆり』はもはや人間の業を肯定する百合漫画にまで昇華したのかもと思ってみたり。上記以外の回は質のばらつきが大きい気もするんですが、百合妄想へのツッコミ手法に微妙にひねりが加えられているところが興味深かったです。
第64話と67話について
この10巻でもっとも刮目に値するのは、第64話のオチのつけ方。切って落とすようなみごとなサゲが、まるで古典落語のようです。落語ってオチ(サゲ)の後、くどくど説明しないでしょう。「今度はお茶がこわい」の後に、周囲の反応なんて書かない。「上がった上がったっ、たーがやー」の後に、首をはねた側におとがめはなかったのかなんて一切説明しない。ドッと笑わせた瞬間にいきなり演目が終わるという、あの鮮やかさに通じるものがあると思うんですよね。
結衣と綾乃のダジャレがひたすら続く第67話にも、落語っぽい楽しさを感じました。単なるいつもの単発地名ダジャレかと思いきや、そこからテニスのラリーのようにダジャレが続くので、ぼろぼろボロブドゥールあたりで腹筋崩壊。話自体のラストは地口オチではないという意外性もよかったです。
上記以外の回は
散発的なおもしろさはあるんだけど、今ひとつ質が安定していないような気も。ただ、毎回バットを短く持って確実にヒットを打ちに行くようになってしまうと『ゆるゆり』ではなくなってしまいそうなので、これぐらいのゆるさがちょうどいいのかもしれません。
ちなつの百合妄想へのツッコミに新たに「ちなつビジョン」というネーミング(p. 10)をほどこし、しかも結衣のドン引きの表情で変化をつけたりする(p. 94)という工夫はよかったと思います。女の子同士の一見きわどいシチュエーション(第62話)を出してから、鼻血ネタではなく京子のボケと結衣のツッコミで落とすというところも新鮮でした。百合漫画において関係の進展にほどよくブレーキをかけるのって難しい(そこで安易に異性愛規範性を持ち出して失敗する作品多し)と思うんだけど、『ゆるゆり』は今のところよくがんばっているのではないかと。
まとめ
パンチ不足の回もあるものの、反面みごとな手際で笑いを取りに来る回もあり、全体としては満足がいく1冊。百合ネタの処理も工夫がされていて、なるほどと思いました。