石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

米俳優ジョージ・タケイが仏テロにコメント

To The Stars: The Autobiography of George Takei (Star Trek) (English Edition)

『スター・トレック』で知られる日系アメリカ人の俳優ジョージ・タケイ(George Takei)が、フランス・パリの同時多発テロに関して、Facebookでとてもいいことを言っています。

以下、引用。

これらの攻撃を実行した人びとと見た目が似ているという理由で、移民や難民を敵とみなす人が出てくることは間違いないだろう。それはちょうど、平和を愛する日系アメリカ人が、真珠湾攻撃の後敵と見なされたのと同じだ。しかしわたしたちは、人を類別して人間性を奪いたいという衝動に抵抗しなければならない。まさにこの衝動こそが、今夜の狂気と暴力の燃料となったのだから。

There no doubt will be those who look upon immigrants and refugees as the enemy as a result of these attacks, because they look like those who perpetrated these attacks, just as peaceful Japanese Americans were viewed as the enemy after Pearl Harbor. But we must resist the urge to categorize and dehumanize, for it is that very impulse that fueled the insanity and violence perpetrated this evening.

ジョージ・タケイは日系移民の3世。第2次世界大戦開戦当時は4歳でした。当時のことを、彼は2014年6月のTEDでのプレゼンテーション「かつて自分を裏切った祖国を愛している訳」でこんな風に振り返っています。(以下、日本語トランスクリプトより引用。読点は引用者が追加)

私が4歳の頃でした。1941年の12月7日 日本軍が真珠湾を爆撃しました。これを皮切りに世界は 一夜にして戦争へと突き進みました。これを皮切りに世界は 一夜にして戦争へと突き進みました。アメリカは突如として ヒステリー状態に陥りました。日系アメリカ人や 日本人を祖先にもつ アメリカ国民らには 疑惑と恐怖 そして むき出しの憎悪の眼差しが 一斉に向けられました。理由は単に 真珠湾を襲った日本人に 見た目が似ているからです。ヒステリー状態は さらに膨らみ ついに1942年の2月 合衆国大統領 フランクリン・ルーズベルトの命令で 西海岸の日系アメリカ人は 全員捕らえられたのです。私たちは告訴することも 裁判を起こすこともできず 「適正手続きの保障」すら ありませんでした。

仏テロにあたって、これと同じことを繰り返すなとジョージは言っているんです。

先述のFacebookポストの最後を、彼はこう結んでいます。

闇と恐怖の力に対して、愛と思いやりを常に優先しなければならない。

Against the forces of darkness and terror, love and compassion shall always prevail.

ここ日本でも、今回の事件のもたらす恐怖と不安から「人を類別して人間性を奪いたいという衝動」に抵抗できなくなり、憎悪の扇動に荷担してしまう/既に荷担してしまっている人は少なくないように思います。しかし、このような安易な類別、つまりステレオタイプ化がかつて他ならぬ日本の同胞をもさんざん苦しめたことを、わたしたちは忘れてはならないと思います。

ステレオタイプ化で思い出したことがひとつ。かつて日本人留学生がパリでオランダ人女性を殺害してその肉を食べた、通称「パリ人肉事件」と呼ばれる猟奇事件がありました。1981年のことです。それからしばらく、日本人がどれぐらい偏見の目で見られ、人種差別的なカリカチュアの対象にされたことか。単に日本人留学生だというだけで「殺されるぞ」「喰われるぞ」などと揶揄されたり、避けられたりもしたんですよ。あのとき日本人は「一部が猟奇犯罪を起こしたからといって全部一緒くたにするな」と怒ったはずなのに、同じパリで今度は別の人種・民族と思われる人間がテロ事件を起こした(という容疑をかけられた)ら、今度は自分たちの側が偏見をむき出しにするというのは都合が良すぎ。だいたい、ここで恐怖に流されて社会の分断を招いたら、攻撃者の思うつぼではないですか。過去に学び、踏みとどまる勇気を持たねばと思います。