2016年2月17日、スポーツブランドのナイキが、同性愛者は「動物以下」だと発言したボクサーのマニー・パッキャオ(Manny Pacquiao)との契約を打ち切ったと発表しました。「ナイキはいかなる差別にも反対する」と同社は表明しています。
詳細は以下。
Manny Pacquiao’s Nike contract terminated after homophobic slurs | Sport | The Guardian
母国フィリピンの下院議員でもあるパッキャオは、現在上院選に出馬中です。問題の発言はインタビュー中になされたもので、2月15日に地元TV局TV5で放映されたとのこと。ガーディアンによれば、パッキャオはこんなことを言ったのだそうです。
「同性とつがう動物がいますか? 雄と雌との区別がつくだけ、動物の方がましですよ。男が男と、女が女とつがうのなら、彼らは動物以下です」
“Do you see animals mating with the same sex? Animals are better because they can distinguish male from female. If men mate with men and women mate with women they are worse than animals.”
同国の同性愛者のコメディアン、バイス・ガンダ(Vice Ganda)は、これに対しtwitterで「祈りの会に出席して聖書を読んだというだけの理由で、神のように人をさばいてもよいと思っている人がいる」、「上院議員に必要なのは政治や法律や経済の専門家だ。にせ預言者ではない」と批判を展開。また、同性婚しているフィリピン人歌手のAiza Seguerraは、Instagramで以下のように意見を表明しました。
画像の英文を一部訳すとこんな感じです。
あなたはこれまで我が国を誇りあるものにしたかもしれませんが、あなたの声明は、国じゅうに対しなぜあなたに投票してはいけないのかを教えるものでした。そして、そう、わたしはあなたは無知で偏狭な偽善者だと思います。
You might've done our country proud but with your statement, you just showed the whole country why we shouldn't vote for you. And yes, I think you are an ignorant, bigoted hypocrite.
こうした反響の中、パッキャオがどのような行動をとっていたのかというと、まずは妻と並んで撮った写真をInstagramに載せ、聖書を引用して自己正当化することでした。
冒頭部だけ訳しますよ。
わたしは肉の欲望よりむしろ主のおきてに従います。わたしは誰のこともとがめてはおらず、聖書に書いてある真実を話しているだけです。
I rather obey the Lord's command than obeying the desires of the flesh. Im not condemning anyone, but I'm just telling the truth of what the Bible says.
暗に同性愛は「肉の欲望」だと言っているも同然で、つまりはヘイトの上塗りですね。(2016年2月19日追記:TMZ.comによれば、現在既に消されている別の投稿では、聖書のレビ記の『女と寝るように男と寝る者は、ふたりとも憎むべき事をしたので、必ず殺されなければならない。その血は彼らに帰するであろう』という部分がわざわざ引用されていた模様。これは偽善者のホモフォーブが引用したがるフレーズとして有名です。レビ記では安息日に仕事をすることも禁じられているはずなのですが、パッキャオは日曜日にボクシングの試合をしたことがないとでもいうのかしら?)
フィリピンの同性愛者団体はパッキャオへの投票ボイコットを呼びかけ、ナイキにパッキャオとの契約打ち切りをもとめるオンライン署名には、すぐに数千人の署名が集まりました。結局パッキャオは2月16日、twitterに謝罪動画をアップロードしたのですが、それが典型的な「なぜ批判されているのかわかっていない謝罪」でねえ。以下、CNNによる英訳から日本語に訳してみました。
「わたしがゲイの人々(同性愛者)を動物と比較したことで傷ついたすべての人に謝罪します」と彼は言った。「わたしの間違いでした。どうか、人々を傷つけたことを許してください」
「しかし、このことでわたしの同性婚反対の立場が変わるわけではありません。それがわたしの信念です。わたしの間違いは、ゲイの人々を動物と比較したことだけです」
"I'm sorry for everyone who got hurt due to my comparison of gay people (homosexuals) to animals," he said. "It was my mistake. Please forgive me for those who I've hurt. "
But this does not change my position against same sex marriage. That's what I believe. My only mistake is comparing gay people to animals."
ガーディアンによれば、ナイキは2016年2月17日、以下のような声明を発表したとのこと。
「当社はマニー・パッキャオの発言は憎むべきものであると理解しています。ナイキはいかなる差別にも強く反対しており、また、LGBTコミュニティの権利を支持し、その権利のために立ち上がってきた長い歴史を持っています。当社にはもはやマニー・パッキャオとのつながりはありません」
“We find Manny Pacquiao’s comments abhorrent. Nike strongly opposes discrimination of any kind and has a long history of supporting and standing up for the rights of the LGBT community. We no longer have a relationship with Manny Pacquiao.”
当たり前といえば当たり前。ナイキはこれまでにもLGBTスポーツ・サミットを開催したり、オープンリー・ゲイのプロ選手(ブリトニー・グライナーやジェイソン・コリンズ)と契約したり、#BETRUEコレクションでLGBT支持を表明したりしているのに、万一ここでパッキャオのアンチゲイ発言を看過したりしたら、これまで築いてきた企業イメージが土砂崩れですからね。もしもパッキャオの側が、あんな発言や「謝罪」をしてもスポンサーを失わないと思っていたのだとしたら、そっちの方が不思議なぐらいなのですが、ひょっとして祈りの会で聖書を読んで何か勘違いしてしまうと、そんなことすらわからなくなってしまうのでしょうか。
マニー・“パックマン”・パッキャオ、ボクサーとしては好きだったんですが、そんなわけで今後はもう応援できそうにありません。2016年4月に予定されているというティモシー・ブラッドリー・Jr戦では、悪いけどブラッドリーの方を応援させてもらうわ。ブランドン・リオス戦と同じぐらいの勢いでKOしたれや、ブラッドリー!