石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

今週の未紹介LGBTニュース(2018年8月5日)

Queer Eye: Love Yourself. Love Your Life.

『クィア・アイ』の本Queer Eye: Love Yourself. Love Your Life.が予約開始に

Netflixの人気番組『クィア・アイ』の5人のゲイ、通称「ファブ5」たちが著者の、Queer Eye: Love Yourself. Love Your Life.という本が、ペンギン・ランダムハウスグループから出版されます。発売日は2018年11月13日で、全256ページ。Kindle版とハードカバー版があり、どちらも既に予約可能です。

Queer Eye: Love Yourself. Love Your Life.

Queer Eye: Love Yourself. Love Your Life.

  • 作者: Antoni Porowski,Tan France,Jonathan Van Ness,Bobby Berk,Karamo Brown
  • 出版社/メーカー: Clarkson Potter
  • 発売日: 2018/11/13
  • メディア: ハードカバー
  • この商品を含むブログを見る

Amazon.comの分類では、この本は「料理法」「セレブ&TV番組」「セルフヘルプ本」などのカテゴリに含められているみたい。以下、ペンギン・ランダムハウスによる内容説明を一部引用して訳してみます。

ファブ5について知ったあと、読者は実用的な5つの章へと案内されることになる。そこでは彼らの専門分野(料理とワイン、ファッション、グルーミング、室内装飾、カルチャー)のみならず、身心の快適状態、もてなし、自分のパーソナルブランドの明確化などの話題が登場し、日々の暮らしの「困った」を解決するためのおしゃれな一口アドバイスも完備。

After you get to know the Fab Five, together they will guide you through five practical chapters that go beyond their designated areas of expertise (food & wine, fashion, grooming, home decor, and culture), touching on topics like wellness, entertaining, and defining your personal brand, and complete with bite-sized Hip Tips for your everyday quandaries.

つまり番組のファンブック兼お役立ちアドバイス集みたいな位置づけの本らしいです。しっかし、2018年に2月にS1が始まったと思ったらその4か月後にもうS2を配信し、7月にS3の制作を発表し、さらに11月には本も出すって、どこまでフットワークが軽いんでしょうNetflix。

ゲイの高校卒業生総代、クラウドファンディングで集めた学費をLGBTQ生徒の奨学金に寄付

Now That His School Is Paid For, This Gay Valedictorian Is Giving Back

高校卒業生総代のゲイ男子、家を追い出されクラウドファンディングで学費調達 - 石壁に百合の花咲く」の続報。ジョージタウン大学がこの学生、セス・オーウェン(Seth Owen)さんへの財政援助案("financial aid package"、学校が学生の経済状況や能力などに応じて提示する学資支援プログラム)を見直したため、オーウェンさんは学費負担なしで進学できることになったとのこと。そこでオーウェンさんは、クラウドファンディングで集まったお金を全部LGBTQ+の学生を助けるための奨学金に寄付することにしたのだそうです。

以下、本人の弁。

「今年の始めにぼくが置かれていたのと同じ状況にいるLGBTQ+の学生を援助する奨学金を創設するため、今調査をしているところです」

I am in process of exploring the establishment of a scholarship to help LGBTQ+ scholars who find themselves in the circumstance I was in earlier this year.

「ぼくが目にしてきた親切と気前の良さを(他の困窮しているLGBTQ+学生に)手渡す方法を探するもりです」

I will be seeking to pass on the kindness and generosity that I have been shown.

オーウェンさんが黙って泣き寝入りしなかったことで、結果としてオーウェンさんのみならず他のLGBTQ+の学生も助けられることになったわけですね。やっぱり行動することって大事。

トランスの元スタバ従業員がスタバを差別で訴える

Transgender woman suing Starbucks after alleged discrimination and misgendering

トランスジェンダー女性のマディー・ウェイド(Maddie Wade)さんが、以前働いていたスターバックスの店長から差別と差別を受けたとして訴えを起こしました。訴状は以下参照。

ウェイドさんの主張では、店長のダスティン・ガスリー(Dustin Guthrie)氏は、ウェイドさんがトランスジェンダーでホルモン療法と顔面の手術を受ける予定だと知ると、彼女の労働時間を減らしたり、ガスリーさんがもう使っていない男性名で呼んだり、"brother"(よう兄弟)など男性に対して使う言い回しを使って男扱いをしたりしてきたとのこと。

スターバックスは人種差別の批判を受けて2018年5月29日、米国内の直営店8000店舗を一時閉鎖して人種差別防止研修をしたばかりです。次はトランス差別防止研修をすることになるんでしょうか。

LGBTQコミュニティを小児性愛と結び付けようとする嫌がらせポスター相次ぐ

How a Fake “Pedophile Pride” Poster Tried to Target Oregon’s LGBTQ Community - them.

米国オレゴン州で2018年6月19日、あたかも同州のLGBTQプライド・フェスティバル「セントラル・オレゴン・プライド」がNAMBLA(North American Man/Boy Love Association、ペドフィリアの合法化を求める北米の組織)と組んで小児性愛を礼賛しているかのように見せかける偽の「ペドファイル・プライド」ポスターが貼られているのが発見されました。

もちろんこんなイベントは実在しません。ゲイとペドファイルを混同させることでゲイへの憎悪を煽ろうという、おきまりのやり口です。

そうかと思いきや、8月2日、保守派の米俳優ジェームズ・ウッズがこんな画像をTwitterにup

ウッズがアップロードした写真には、レインボーのストライプを背景に成人男性が小さな子供と手をつないでいるイラストをあしらい、「ペドファイルもまた人間なのです」「なぜなら愛は愛だからです」というコピーを添えたポスターらしきものが映し出されています。ウッズのツイートの文面の"And so it begins"というのは、『ロード・オブ・ザ・リング』の、角笛城の戦いの直前のこちらの台詞に端を発するインターネット・ミームです。

つまりジェームズ・ウッズはここで、「邪悪なペドファイルのゲイたちとの戦いが始まるぞ」と暗にほのめかしているというわけ。ただしこの画像はもともとオルトライトの荒らしがいたずらで4chanなどに貼ったものなのだそうで、ウッズはさっそく他のTwitterユーザから突っ込まれています。

やれやれ。

ゲイは、あるいはLGBTQコミュニティは子供を性的に誘惑しようとしているという濡れ衣を着せてバッシングしたがる人たちは、結局子供のことはLGBTQコミュニティへを叩くためのダシとしか思ってないよね。本当にペドファイルを擁護して子供を食い物にしてきた団体ってのは、たとえば以下のニュースで告発されてるところなんかがそうなんだけど、こういう事実は絶対に無視するんだよねー。

LGBTプライドマーチで活動家30人を拘留 露サンクトペテルブルク

Russian police break up Gay Pride protest in St Petersburg | Euronews

2018年8月4日、ロシアのサンクトペテルグルクでLGBTプライド・イベントが開催され、LGBT活動家30人(25人という報道もあり)が当局に逮捕されました。

1993年まで同性愛が違法とされていたロシアは、2013年に施行された同性愛宣伝禁止法(『反同性愛法』、『同性愛プロパガンダ禁止法』とも)を根拠に、今なお性的少数者を弾圧しています。上記動画の中では、アクティヴィストのひとりが以下のように話しています。

差別されることにとても疲れています。抗議行動をして、そのこと(差別)を不愉快に思うと発言することは許されていません。我が国はわたしが不愉快だと言うのを聞きたくないんです。そのことに興味がないんです。

‘I am very tired of the discrimination and the thought that I’m not allowed to walk out and say I feel bad about it. My country doesn’t want to hear that I feel bad, it doesn’t care,’

アルメニアの村人らがLGBTI活動家宅を襲撃 9人がけが

Armenian villagers tried to lynch LGBTI people, injured nine of them

2018年8月3日、アルメニアのLGBTI活動家で「Rainbow Armenia Initiative」の創設者であるHayk Oprah Hakobyanさんが自宅で友人たちと酒を飲んでいたところ、ひとりの村人が現れてHaykさんらを脅迫。その後30人もの村人が集まって「ホモセクシュアルがここに住むのは許さん」などと叫びながらHaykさんらに暴力をふるい、9人にけがをさせたとのこと。うち2人は重症だそうです。

襲撃者の中にはHakob Arshakyan元村長も含まれており、Haykさんは、自分の父親が最近元村長の腐敗に対する苦情申し立てをしたので、それが今回の襲撃の動機になったのかもしれないと話しているそうです。たとえそれが直接的な動機だったとしても、ホモフォビアを悪用してここまでのリンチができてしまうというのは怖すぎる。ちなみにPINK Armeniaによると、同国では2011年から2013年だけで、5891人ものLGBTの人々が、差別から逃れるため移民として他国に移住しているそうです。

ブレイズ・バーンスタイン殺しはヘイトクライム 検察が発言

The Killing Of A Gay California Teen By His Former Classmate Was A Hate Crime, Authorities Say

カリフォルニアゲイ大学生殺害事件の容疑者、被害者からキスされたと主張 - 石壁に百合の花咲く」の続報。オレンジカウンティのTony Rackauckas地区検事長が2018年7月31日、この殺人は被害者のブレイズ・バーンスタイン(Blaze Bernstein)さんが同性愛者だったことを動機とするものだという証拠があると発言したそうです。

インディアナ大学の学生だったバーンスタインさんは2018年1月9日、カリフォルニア州の公園で、20回以上刺された形跡のある遺体となって発見されました。その後逮捕されたサミュエル・ウッドウォード(Samuel Woodward)容疑者は、バーンスタインさんの元クラスメイト。捜査陣は7か月にわたって同容疑者の電話、コンピュータ、ソーシャルメディアなどを調べ、「人種差別主義的、女性差別的、反同性愛的、反ユダヤ主義的、反政府的な」メッセージや画像を発見したとのこと。これらの画像は「生々しく、背筋が凍るような」もので、「保護が必要なあらゆるグループへのヘイトをまき散らすと形容できる」ものだったとRackauckas地区検事長は述べています。ちなみにバーンスタインさんは、名前からわかる通り、ユダヤ系でもあります。