ゲイ少年が主人公の小説“Lawn boy”が、「小児性愛を描いている」というデマを流され、2021年でもっとも図書館からの撤去を要求された本に。著者のもとにはデマを真に受けた人からの脅迫や殺害予告が押し寄せました。現在では撤去を実施した図書館の半数以上がこの本を再び棚に戻し、同書の売り上げは急増しているとのこと。
デマが流されて騒動が拡大していった過程をまとめると、こんな感じです。
- テキサス州の学校区(教育委員会)の会合で、Burkmanという女性が、同書の中の10歳の少年同士が性器に触り合う部分を問題視。さらに、「小学4年同士の性行為を規範化するのは誰か? 教えてあげましょう、ペドファイルです」と発言。この発言がネットで広まる
- その数日後、上記発言に刺激されたバージニア州の母親Stacy Langtonが、やはり学校区の会合で、「"Lawn boy"は成人男性と10歳の少年との性的行為を描写している」と虚偽の主張をする。これもネットで広まる
- Fox Newsの番組で、タッカー・カールソンがLangtonの主張を取り上げ、同小説には「大人の男と少年のセックスが生々しく描かれている」だの、こういう描写をするのは「子供たちを性的に搾取するための準備」だのという大嘘を吹聴
- "Lawn boy"の著者Jonathan Evisonのもとに、殺害予告や、彼を「小児性愛者」として非難するメッセージ、彼の娘たちを性的暴行するという脅迫などが殺到
- "Lawn Boy"、2022年でもっとも図書館から撤去された本に
ひっどいな。
とりあえずワシントンポストの調査では、この本を撤去した図書館の63%がその後、再び棚に戻しているそうです。また、同書のペーパーバックの売り上げは初版発行時(2018年)から100%upしているとのこと。でも同性愛を意図的にペドフィリアと混同して叩くという古典的な手法がいまだにこれだけの被害を生んでるという事態には頭が痛くなるし、子供に対する性加害を問題視してるはずの人たちが著者への攻撃としてレイプ予告を選ぶというなりふり構わなさにはさらにぞっとさせられます。結局、LGBTQ+フレンドリーな本とその著者を攻撃できればなんでもいいんだろうな、この人たち。本当に小児性虐待に反対しているのなら、書籍の中のありもしない描写に噛みつく前に、児童婚を禁止する法案を潰したり、下院議長(当時)が複数の少年に手を出して有罪判決を受けたり、はたまたその有罪判決を受けた下院議長(当時)を積極的に擁護したりしている政党をもっとガンガンに非難してるはずだもんな、「共和党」っていうんですけど。